【談話】公務員制度改革にかかわる「全体像」の決定にあたって
2011年4月5日
全国労働組合総連合・公務員制度改革闘争本部
本部長 小田川義和(全労連事務局長)
1、政府の国家公務員制度改革推進本部(本部長−菅直人首相)は本日、「国家公務員制度改革基本法等に基づく改革の『全体像』」(以下、全体像)を決定した。
「全体像」は、採用から退職にわたって、公務員制度の「全般的かつ抜本的な改革」を推進していくために、今後の「改革」の具体的措置や実施時期を明らかにしたものである。今通常国会には、国家公務員法改正法案、国家公務員の労働関係に関する法律案、内閣人事局や公務員庁など新たな組織の設置にむけた法律案などの関連法案を提出するとしている。
2、「全体像」では、60余年にわたって続いてきた人事院勧告制度を廃止し、協約締結権の回復による「自律的労使関係」にむけた措置が盛り込まれた。
これによって、賃金や労働条件を労使間の交渉によって協約を結んで決めていく制度へと前進がはかられることとなる。あわせて、不当労働行為の禁止・救済の規定や、中央労働委員会によるあっせん・調停・仲裁で労使紛争を解決する調整システムが新たに設けられる。
戦後まもなく一方的に奪われた公務員の労働基本権の一部である協約締結権が回復することは、運動の到達点として確認できるものである。
3、同時に、「自律的労使関係」と言うものの、「立法政策」としての側面が強調され、基本的人権としての労働基本権回復という視点に立ち得ていない不十分さも明らかとなった。
具体的には、民間や独立行政法人にも見られない組合結成にあたっての「認証制」や、管理運営事項を「交渉できない事項」とすること、協約締結前の内閣による事前承認などは、「自律的」な労使交渉を制約しかねない側面を持っており、今後の法案化にあたって是正が求められる。
そして何よりも、ストライキ権の回復を今後の検討事項にとどめたことをはじめ、刑事施設職員等の団結権を引き続き制約するとした点は、6度にわたるILO勧告に照らしても不十分なものである。これらの権利回復にむけて速やかな措置を求めるものである。
4、未曾有の災害となった東日本大震災は、「構造改革」による経済効率一辺倒の政治のもとで、国民の命と財産を守るという公務公共業務の本来の役割や、安全対策、危機管理などがなおざりにされてきた日本の現状を明らかにした。今次公務員制度改革でも、「効率化」が強調されるもと、憲法15条にもとづく公務員制度の実現という立場が軽視されていることを懸念する。大震災を契機に、政府は効率性優先の政策を抜本的に転換すべきである。
そのことともかかわって、新たな制度のもとでも、人事の公正性を確保し、「国民全体の奉仕者」として公務労働者の役割発揮にむけた制度を確立することが、国民の諸権利を守るうえでも重要課題であることを指摘する。
全労連闘争本部は、憲法とILO勧告に沿ったストライキ権をふくむ労働基本権の全面回復、民主的な公務員制度の確立にむけて奮闘する決意を新たにするものである。
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