【談話】公務員制度改革関連法案の閣議決定にあたって
政府は本日、国家公務員の労働関係に関する法律案、国家公務員法改正法案など、公務員制度改革関連法案を閣議決定した。
戦後間もなく公務員労働者の労働基本権が一方的に奪われ、その後60年余り続いた人事院勧告制度を廃止し、政府が使用者として国家公務員労働組合と交渉し、その結果を労働条件に反映させる「自律的労使関係制度」を創設するための法案提出は、戦後の労働運動の大きな節目であり、2001年に開始された公務員制度改革論議の到達点である。
しかし、地方公務員や教職員にかかわる制度改革については論議が開始されたばかりであり、労働組合との協議を経て、時間をおかずに成案が取りまとめられることを強く求める。
提出される国家公務員法等の内容は、人事院勧告制度の廃止とともに、中央人事行政機関としての人事院の改組と公務員庁の設置と内閣人事局の新設などの組織改編も伴うものとなっている。その点では、公務員労使関係や労働条件決定の仕組みだけでなく、民主的で公正な公務員制度の運用、監視の仕組みからしても大きな改革となっている。
その内容を見ると、人事院の機能と権限を一部引き継ぐ人事公正委員会のチェック機能と権限が、公務員庁や内閣人事局の権限に比較して不十分であり、公務員の政治的中立性が損なわれることが懸念される。
また法案では、公務員労働者の基本的人権としての労働基本権を保障することよりも、財政民主主義や勤務条件法定主義など国家機能がより重視されていることも否めない。この点では、ILO(国際労働機関)からの数次にわたって行われた公務員制度改革をめぐる勧告に応えるだけの十分な法案とはなっておらず、道半ばの到達点である。
消防職員をはじめ、団結権が保障される公務員の範囲の拡大、団体協約締結権のより完全な保障、そして争議権回復に向け、引き続きの取り組みをすすめる。
法案には労働組合の事前認証制を創設し、管理運営事項を交渉対象事項から除外し、協約締結にあたっての内閣の事前承認を規定するなど、団結権や労働協約締結権を制約する条項が多々あることから、最終段階までその見直しを求めてきた。そのような制約規定は、労使の対等な交渉を阻害し、公務員労働者の権利、労働条件を悪化させる懸念を持つからである。
法案策定とも並行して、「自律的労使関係制度の先取り」などとして検討され、労使合意のないまま一方的に閣議決定が強行された、国家公務員の賃金カットをめぐる政府の対応は、そのような懸念を増幅させるには十分なものであったことを指摘しておく。
現行法制下においては、明確に憲法に違反する賃金カットという労働条件の一方的な引き下げを許さないたたかいともあわせ、国会審議の段階でも法案の問題点にかかわる修正を粘り強く追求する決意である。
2011年6月3日
全国労働組合総連合・公務員制度改革闘争本部
本部長 小 田 川 義 和
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