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2011年7月27日

【談話】低額の中賃目安を乗り越え「時給1000円」実現に着実な前進を
― 中央最低賃金審議会目安答申にあたっての談話 ―

全国労働組合総連合
事務局長 小田川義和

1.本日、中央最低賃金審議会は2011年度地域別最低賃金額改定の目安を厚生労働大臣に答申した。Aランク4円、B・C・Dランク各1円と、きわめて低額かつ格差を拡大するものとなっている。最低賃金が厚生労働省による不十分な「生活保護算定値」さえ下回っている9都道府県のうち4地方については乖離解消を求めたが、宮城を含む5地方については単年度での解消は先送りし、乖離縮小にとどめた。
 乖離解消もしくは縮小を求めた地方(神奈川18円、東京16円、北海道13円、広島6円、埼玉5円、大阪4円、兵庫2円等)も含め、目安どおりに改定されたとすれば、最低賃金の全国加重平均は、現行より6円増の736円となる。
 このような目安答申となった理由の一つに、東日本大震災の企業経営への影響を過大に主張して「ゼロ円目安」を求めた使用者側の言い分に、大きく引きずられたことがある。災害を口実に、ようやく始まった最低賃金と中小企業政策の底上げの流れを押しとどめかねない不適切な目安答申と言わざるを得ない。

2.今回の目安答申の問題点について、次の点を指摘する。
 今回の審議が東日本大震災の影響に配慮して進められたことは当然であるが、その配慮の方向には異議がある。住居も家財道具も仕事も家族までも失いながら生活再建に向け懸命に努力されている多くの被災者を後押しし、生活再建を軌道に乗せるには、暮らしを支えるに足るだけの所得保障が必要である。被災地域における復興事業の時給単価を見ると、最低賃金ギリギリであり、年収換算で170万円にも届かない。このような低額な賃金では、被災者の生活再建はおぼつかない。せめて、フルタイムで働けば、労働者の平均年収の半分、200万円の所得を保障することが、被災者の生活再建を支援するものである。
 また、実施されている復興事業での雇用実態をふまえれば、最低賃金の大幅改善は被災地域の経済循環を活性化させ、壊滅的な被害を受けた中小企業の経営再建にも寄与することになる。
 さらに、この間、内需拡大策としての最低賃金引き上げの有効性が各方面から指摘されているように、長引くデフレ状態を克服し、内需主導の経済構造に切り替えていく上での効果も確認すべきである。
 そのような立場に立つことが、今回の中賃目安の使命であったと考える。

4.そもそも今の低額の最低賃金は、厚生労働省による不十分な「生活保護算定」でどのように糊塗しようと、明らかに生活保護水準を下回っている。憲法、労働基準法、最低賃金法のいずれに照らしても不当である。この点については、日本弁護士連合会も6月に提出した意見書で厳しい批判と運用改善を求めており、神奈川では低すぎる最低賃金の設定の違法性を問う訴訟も起きている。
 また、2010年6月の雇用戦略対話での「できる限り早期に全国最低800円」を実現するという合意を着実に履行する立場で目安改定が行われることも当然のことであった。
 法制度やこの間の経緯に照らして、今回の中賃目安の逸脱は明らかである。

5.全労連は、この間、中央・地方で数次にわたる統一行動を配置し、全国で最低賃金引き上げの運動を粘り強く展開してきた。大震災の発生後、「震災復興のためにも最賃引き上げを」の世論作りにも努力してきた。各単産・地方組織での、署名や宣伝での世論喚起、審議会への意見書提出とともに、「最賃生活体験」、「生活保護を活用した最低生計費算定法の検討」、「最低生計費試算」など、生計費原則強化に焦点をあてた取り組みも行ってきた。
 これらの運動の到達を背景に、各地方最低賃金審議会が、低すぎる目安を乗り越える改定を決定するよう引き続き取り組みを強める。財界も一度は合意した「早急に800円以下の最賃をなくし、せめて時給1000円」の実現に向けたたたかいへの参加を呼びかける。

以上

 
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