【談話】野田首相の「TPP交渉参加表明」に抗議する
本日、野田首相は、日本社会を破壊に導く「TPP(環太平洋経済連携協定)交渉」への参加表明を行った。TPPは、自らのルールを日本に押し付ける米国の意図が極めて明確で、海外依存を強める日米の大企業にとっては都合が良い一方で、圧倒的な日本国民には堪えがたい犠牲を強いるものである。
野田首相は、TPP参加の国内産業や国民生活への影響と、それへの対策を明らかにすることもなく、参加断念を迫る私たちの申し入れや高まる参加反対の声を押し切り、「経済連携で後れをとるな」、「国を開け」と迫る財界やアメリカ政府の圧力に屈して強引に参加を決定した。
このような国民無視の決定は断じて認めることはできない。強く抗議し、参加表明の撤回を求める。
TPPは、原則としてあらゆる関税を撤廃し、貿易規制をなくすものである。WTO参加以降も関税が残されている農業製品や皮革製品などへの影響は大きく、破壊的な打撃を与えることは明らかである。
同時にTPPでは、医療や薬品行政、政府調達、食品安全、労働、総合建設等の「サービス貿易」など多方面の分野の国内制度が、非関税障壁として自由化・規制緩和の対象となる。例えば、混合診療の自由化や、共済規制の強化など、労働者・国民生活に直接影響する制度改変も想定される。TPP参加は、日本社会のルールや文化を一変させ、究極の「構造改革」にひた走ることになる危険性が高い。TPPへの参加が、東日本大震災被災地の復興の障害となることも確実である。
TPPは、労働市場にも甚大な被害を与える。農林水産省試算でも農業従事者と関連産業で340万人の就業機会が失われるとしている。労働者の移動の自由化によって、低賃金水準の労働者が日本の労働市場に流入し、賃金・労働条件の引き下げ競争の激化という混乱を招き、日本国内の格差と貧困がさらに悪化することは避けられない。公共事業への外国企業参入が、入札ダンピングをより加速させ、公務・公共サービスでの雇用破壊が進む危険性もある。
この間の国会論戦で、政府のTPP協定参加の主張の綻びや、協定情報の隠ぺいも表面化してきた。しかし、参加反対の立場からの意見や疑問に対する回答や説明も、野田首相は尽くそうとさえしていない。世論調査でも、TPP参加は国論を二分する状況にあると同時に、「わからない」と賛否を留保する回答が相当数にのぼり、政府の説明責任が果たされていないことを明らかにしている。
また、全国各地でTPP協定反対の集会や行動が展開され、圧倒的に多くの地方自治体議会から「反対」、「慎重対応」の決議が上がっている。国会内では超党派の国会議員が参加反対の緊急集会を開いた。
これらのことは、現段階で政府が結論を出せる状況にはないことを物語っている。この点でも、野田首相のTPP参加表明は撤回されるべきである。
全労連は昨年、菅首相が突然TPP協定参加を発言した時以来、一貫して参加反対の立場で署名や宣伝、国会議員要請、地方議会要請など旺盛な運動に取り組んできた。野田首相の参加表明で、私たちのたたかいが終わるものではない。引き続き全国で、TPP協定反対の一点でたたかいを強め、共同に結集し、参加阻止に向けた取り組みを粘り強く展開する。全国の仲間の奮闘を心から訴える。
2011年11月11日
|