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【談話】危機を煽る前に、大企業は社会的責任の履行を
− 経団連「2012年版 経営労働政策委員会報告」に対する談話 −

 本日、経団連は「2012年版経営労働政策委員会報告」(経労委報告)を発表した。
 「危機を乗り越え、労使で成長の途を切り拓く」と題された「経労委報告」は、高齢化、東日本大震災と福島原発事故、円高、累増する国債残高などによって、製造業の国内生産が「存続の危機に瀕し」ているとした。そして、個別企業の国際競争力強化による「経済の成長」のみが危機への対処策だと描き出されている。
 その結果、人件費をコストと捉え、「ベースアップの実施は困難」と切り捨て、「定期昇給の負担の重さを労使で共有する」ことを迫り、賞与・一時金の「個別化」の徹底を求めるなど、総額人件費抑制をより強化する姿勢が示されている。
 全労連は、経団連のそのような主張は受け入れられない。

 日本経済が「デフレの罠」にはまり、経済成長が停滞している最も大きな原因は、90年代後半から続く賃金低下と非正規労働者増に示される雇用悪化にあり、そのことにも起因する地域経済や中小企業の疲弊にある。
 円高や欧州発の経済危機は自然発生の事象ではなく、一部大企業や富裕層の「マネーゲーム(投機)」に起因している。日本政府の巨額な債務の累増は、90年代初頭のバブル経済崩壊以降の景気後退期に繰り返された景気対策、経済活性化や金融危機対策のために財政を動員した結果である。
 地域経済や中小企業の疲弊は、大企業が、国際競争力強化を口実に単価の引き下げ下請け企業に押し付け、産業インフラ優先の施策を求め続けてきた影響が大きい。
 「経労委報告」は、以上のような点に目つぶって言及せず、製造業大企業などの成長が国内経済活性化の要とする破たんした「トリクルダウン」論に固執している。
 危機に瀕しているのは労働者、国民、中小企業と地域経済である。その点に目を向けず、大企業の身勝手さに貫かれる「経労委報告」は、徹底した批判が必要である。

 資本金10億円以上の大企業だけで、2010年度決算時に266兆円もの巨額な内部留保をため込み、上場企業だけで60兆円を超す手元流動性資金を持っている。大企業は、日本で最も富裕な「層」である。
 OECDなどの国際機関も主張するように、世界経済が危機に瀕している今こそ、格差と貧困解消のために富裕層が応分の負担をすべき時である。日本で言えば、東日本大震災の復興や国内経済活性化のために、大企業が税負担を高め、国内投資をおこなって雇用の場を拡大し、賃金引き上げで内需を拡大軌道に乗せる先導役を果たすことなどが、大企業に求められる社会的責任である。
 全労連は、大企業の身勝手な理屈に貫かれている「2012年版経労委報告」の欺瞞性を打ち破るためにも、雇用と仕事の安定、賃上げと社会保障拡充の要求を高く掲げ、労働者や諸階層との総対話と共同を広げ、2012年春闘勝利に力を集中させる決意である。

2012年1月23日

全国労働組合総連合        
事務局長  小 田 川 義 和

 
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