【談話】「子ども・子育て新システムに関する基本制度とりまとめ」に関する談話
2012年2月20日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川義和
2月13日「子ども・子育て新システム検討会議作業グループ基本制度ワーキングチーム」は、「子ども・子育て新システムに関する基本制度とりまとめ」を公表した。とりまとめでは、(1)、市町村が制度を実施し、国都道府県等が制度の実施を重層的に支える仕組みを作る、(2)所管や制度、財源が分かれている子ども・子育て支援策を再編成し、包括的・一元的な仕組みを構築するとしている。新システムは「社会保障と税の一体改革」の名による消費税増税を正当化することが企図されているが、その内容は公的保育制度の解体・民営化政策以外の何物でもない。
とりまとめの中では、「子育てについての第一義的な責任は親にある」として、これまで児童福祉法24条に基づく、国や自治体の保育の措置義務を否定している。自治体の責任は「給付・支援」の役割にとどまり、国の役割は、「地方公共団体とともに子育て当事者、施設・事業者、事業主・労働者の理解を得ることに努める」とされている。憲法に基づく、国・自治体の責任を投げ捨てるものであり容認できない。
「介護保険制度を参考とし」「多様な事業主体の保育事業への参入を促進し」「株式会社の参入も認める」として、自治体は「保育の必要性を認定する仕組み」「事業者の情報を整理して情報提供・相談に対応する」にとどまり「保護者が自ら施設を選択し、保護者が施設と契約する公的契約とする」とされている。施設の偏在や高額な利用料のために、多くの介護難民が生じていることと同様の事態が、保育の現場でも起きることが強く懸念される。
とりまとめには、深刻化し、解消されない待機児問題が保障される仕組みは何一つ盛り込まれていない。とりまとめの中で、計画されている保育への株式会社参入が認められれば、子どもの保育は企業の儲け対象となる。都市部では、深刻化する待機児問題を抱え保育所利用者が差別・選別される懸念もぬぐえない。反対に利用者が少ない地域では事業者の参入は見込めずに保育格差が生まれる心配もある。有効な待機児解消策が示されないまま、事業者と保護者の直接契約のシステムが導入されれば、「お金を出せば保育所に入れる」事態も生まれかねない。
また、企業利益を優先する株式会社の参入のなかで、子どもの発達や安全・安心のためのかなめとなる保育士の人件費が削減されることにより、より、保育士の非正規化や労働条件の悪化も容易に想像ができる。
全労連は、国と自治体の責務を後退させ、公的保育制度を解体する子ども・子育て新システムの撤回を求める。待機児解消のための予算を拡充し、公的な保育制度を拡充させるために運動を強めていく。
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