【談話】「社会保障・税一体改革」の断念を求める
2月17日に政府は、消費税増税を柱とする税制と、年金給付引き下げや保育の民営化を促進する「子ども子育て新システム」などの社会保障の「一体改革」大綱を閣議決定した。
その内容は、本年1月6日に政府等で決定された「一体改革」の素案と一言一句も違わず、素案決定後にも高まっている消費税増税に反対し、社会保障改悪反対の国民世論に全く答えていない。あらためて、「社会保障・税一体改革」の断念、大綱にもとづく法案化作業の中止を強く求める。
「一体改革」素案に対して全労連は、内容と手続きの両面から批判し、強く反対の立場を表明した。マスコミの世論調査などでは、素案決定直後から消費税増税反対の世論が過半数をこえ、野田政権が消費税率引き上げに固執する姿勢を強めるほど支持率は急落している。国民の多くは、「社会保障・税の一体改革」を拒否していることは明らかである。
労働運動総合研究所の試算によれば、消費税10%への引き上げは、100万人以上の雇用を減少させ、GDPを2.5%も縮小させるなど日本経済と社会に深刻な影響を与える。
政府が決定した大綱の実施で年間16兆円もの新たな国民負担が強いられ、内需はさらに冷え込み税収にも影響し、財政にも深刻な影響を与えることは必至である。このような悪循環は、1997年度に消費税が5%に引き上げられた直後にも生じた。その対策として巨額の景気対策が国債を財源に講じられ、財政危機を深刻化させてきた。
増税によって景気が後退し、後退した景気の浮揚策として財政措置が取られ政府の借金を増大させる悪循環をこれ以上繰り返すべきでない。
東日本大震災から1年を迎えようとする今、復旧・復興が遅れて被災者の生活苦が増し、長引く不況のもとで中小零細企業や国内産業の経営難も深刻である。このような時に、増税と社会保障改悪で富の再配分機能をさらに低下させることは、被災者などの願いに逆行している。
2011年度の税制改悪による法人税減税などで実質減税となっている大企業や大金持ちに対する優遇税制にはまったく手をつけず、食料品など生活必需品にも課税される消費税増税をおこなう逆立ちは許されるものではない。多くの先進国で、金余り状態にある富裕層への課税強化策が具体化されていることに目を向けるべきである。
八ツ場ダムの復活にも象徴される大型公共事業予算や、軍事費の聖域化、違憲の可能性のある政党助成金などのムダ遣いはそのままに、社会保障費の総額予算を抑制しつつ消費税増税をおこなう「やらずぼったくり」の施策が「社会保障・税の一体改革」である。
消費税増税の突破口に位置付けられている衆議院比例定数削減や公務員賃金引き下げに反対するたたかいとも結んで、全労連は「社会保障・税一体改革」に断固反対するたたかいの先頭に立つ決意である。
2012年2月20日
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