【談話】ルールなき公務員賃下げに厳しく抗議する
本日29日の参議院本会議で、国家公務員の賃金を2011年4月に遡って平均0.23%引き下げた上で、2012年度、2013年度の2年間にわたり平均7.8%削減する「賃下げ法」が成立した。
「賃下げ法」には、「地方公務員の給与について…(中略)…この法律の趣旨を踏まえ、地方公共団体おいて自主的適切に対応されるものとする」との附則条項も付けられており、賃下げの連鎖を立法府が強制するという異常な法律となっている。
国権の最高機関で、公務員バッシングを扇動し賃下げ競争を地方自治体に迫る悪法が、憲法や法のルールとの厳格な論議もないままに成立させられたことに厳しく抗議する。同時に、法治国家の根幹が揺らぐような恐ろしさを強く指摘しておきたい。
全労連は2月7日付で、民主党、自民党、公明党3党の実務者会談などの公務員賃下げ法案協議への意見を全政党に送付し、問題点を指摘した。
その意見でも指摘した(1)春闘という時期に公務員賃金引き下げを国会が先導して論議することの内需などへの悪影響、(2)労働基本権が制約されている公務員労働者の賃金決定のルールである人事院勧告と国会審議との関係、などの点について、この間の国会審議では、ほとんどまともな論議も行われなかった。法が定めるルールに従うことより、政党間の「密室の談合」が優先されたと言わざるを得ない。
近年、政治主導が強調される一方で、法定化されたルールや憲法の理念が軽視される傾向が少なくない。その結果、地球よりも重いとされる国民の基本的人権が軽々に扱われる状況がふえていると思わざるを得ない。とりわけ、市民であり労働者でもある公務員の基本的人権の侵害が政府機関によって行われる事態が、大阪市での思想調査にも象徴されるように、激しさを増している。
既に表明した点に加え、今回の「賃下げ法」の成立が公務員労働者の無権利状態をより進行させ、労働者を無気力にし、行政サービスの低下につながることを全労連は強く懸念する。
「賃下げ法」審議の過程で、一部の公務員組合と政府との「賃下げの合意」が存在することで、人事院勧告を越える「賃下げ法」は違憲ではないとする強弁もなされている。参議院審議で、当事者組合からの意見表明が認められたことは、そのような強弁の道理のなさの証だと受けとめる。
同時に、現行制度では認められない「労使合意」を大幅賃下げの理由とした以上、国会の責任において、政府が既に提出している国家公務員労働関係法案をただちに審議入りし、その不十分さを是正の上、早期に成立させるべきである。「賃下げ法」のみを強行成立させた国会審議の偏りについても強く抗議し、その早期是正を求める。
2012年2月29日
|