【談話】国家公務員の新規採用抑制方針の撤回を求める
政府は4月3日の行政改革実行本部で、2013年度の国家公務員採用数を2009年度に比で約6割削減する「平成25年度の国家公務員の新規採用抑制の方針」を決定した。
我が国の公務員数は、人口に比して先進諸国の中で最も少なく、定員外とされる大量の非正規労働者によって、高度に複雑化した行政が維持されているのが実態である。
今回の決定は、不安定で劣悪な労働条件で働く労働者が、国の職場で政治によって作り出され続けている現実や、昨年3月11日の東日本大震災でも明らかになった行政体制の脆弱さなどには一切目を向けていない。
多くの国民が反対する消費税増税の口実づくりという政治的思惑のみで、国家公務員賃金引き下げに続いて決定された今回の採用抑制方針は、民主党政権の劣化を象徴する愚策である。政策の継続性や国の行政責任への配慮を欠いた「場当たり的な政策」は、社会をいたずらに混乱させるだけである。新規採用抑制方針の撤回を強く求める。
民間調査機関の集計でも、2013年卒業者の企業採用予定は「前年並み」程度である。文部科学大臣・厚生労働大臣・経済産業大臣の連名で、247の主要経済団体・業界団体へ新卒者等の採用に関する要請書を出した2012年採用動向から大きく好転している訳ではない。
また、大震災被災地域での雇用の場の回復も遅れており、国が雇用の場を直接作り出し、若者の雇用を安定させることこそが今の政府に求められる施策である。
日本の雇用慣行からして、公務員として採用される機会は学卒時が最も高く、突然の新規採用抑制方針の決定は、公務員をめざす若者からその可能性とチャンスを奪い去るものでもある。政府が、雇用不安や若者の就労機会を奪う施策をとることは、求められる役割に逆行しており、この点からも新規採用抑制方針は撤回すべきである。
官民ともに、計画的な採用がおこなわれずに年齢構成がいびつになることは、組織の活力が低下することも繰り返し指摘されている。今回の方針決定は、2013年度採用のみを対象に大幅な抑制を強制する内容であり、何らの計画性も感じられない。その点では、政策運営に責任を持つ政府としての責任のかけらも感じられない。
財政事情の悪化が公務員数とは無関係であることは政府資料からも明らかである。新規採用抑制が公務職場や公務員試験受験者に与える悪影響に比して、行政経費削減の効果も極めて小さい。ただただ公務員バッシングを扇動し、行政形骸化を加速させるだけの結果になることも強く懸念する。
以上の点も指摘し、国家公務員の新規採用抑制方針の撤回を重ねて求める。
2012年4月9日
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