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【談話】2年連続の低額目安を乗り越え、時給1000円に向けた着実な前進を
― 中央最低賃金審議会の2012年度目安答申にあたっての談話 ―

1.本日、中央最低賃金審議会・目安小委員会は2012年度の地域別最低賃金額改定の目安を厚生労働大臣に答申した。その内容は、Aランク5円、B・C・Dランク各4円であり、昨年に続く低水準かつ格差拡大の目安である。しかも、最低賃金が生活保護水準より下回っているとされた11都道府県については、できるだけ早期の解消が望ましいとしつつも単年度でなくてもよいとの見方を示した。青森(5円)、埼玉(12円)、千葉(6円)、東京(20円)、神奈川(18円)、京都(8円)、大阪(15円)、兵庫(10円)、広島(12円では2年間で、北海道(30円)と宮城(19円)は2〜3年での解消を妥当とした。
 目安どおりであれば、改定後の最低賃金の全国加重平均は、現行より7円増の744円、最低額は4円増の649円にしかならない。このような生活保護基準以下の最低賃金を容認する改定に納得することはできない。今回の目安は、雇用戦略対話合意の達成に赤信号を灯す、不十分なものといわざるをえない。

2.昨年の目安は、東日本大震災の影響を口実に加重値6円に抑えられた結果、2007から2010年まで続いた実績二桁台の引上げが中断されることとなった。今年は二桁台の引上げに戻し、1000円を目指すとした雇用戦略対話合意への道筋をつけるべきであった。
 ところが審議では、使用者側が引上げ自粛論を強く主張し、「賃金改定状況調査」(規模29人以下の事業所の賃金改定率・平均0.2%)が目安審議のベースとされてしまった。この議論の進め方は、2007年の最低賃金法改正前の審議方式であり、生計費原則を強調した法改正の趣旨から逸脱している。最低賃金がまともな水準に到達した後であれば、一般的な賃金動向との均衡を配慮する資料として「賃金改定状況調査」を使うこともありえるが、現状は低すぎる最低賃金を“更正”させるために、一般的な賃金の改定率を大きく上回る引上げが必要である。

3.今年の審議でも使用者側は、最低賃金の引上げ=中小企業のコスト増=経営難という図式の主張に固執した。中小企業の経営難の背景にある国民経済的な諸課題、例えば、ワーキングプアの増加と消費の低迷、下請け単価叩きなどの不公正な取引慣行、大震災からの復興と被災者の生活再建の両立などの論点は、意図的に欠落させた。また、雇用戦略対話での合意に基づく論議を避けるため、「法の原則」に立ち返ることを強調した。「法の原則」をいうのであれば、「労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」との最低賃金法第1条を十分にわきまえるべきである。
 同時に、憲法の要請である「健康で文化的な最低限度の生活」、労働基準法の要請である「人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき」賃金水準を達成するために、目標をもち、今年どうするのかといった立場での審議を行なうべきである。使用者側委員に対し、こうした姿勢を強く求めたい。

4.全労連は、この間、中央・地方で数次にわたる統一行動を配置し、全国で最低賃金引き上げの運動を進めてきた。被災地で起きている賃金問題を把握し、復興と生活再建のためにも最賃の大幅引き上げと地域格差の是正が必要であることを明らかにし、生計費原則に焦点をあて、最低賃金が目指すべき水準を明らかにする運動を各地で展開してきた。その結果も活用した審議会への意見書提出、意見陳述も行なっている。
 このような取り組みを最終場面でさらに強め、各地方最低賃金審議会が、低額目安を大きく踏み越える最低賃金改定を決断するよう、旺盛な運動を全国の仲間に呼びかけ、多くの未組織労働者に全労連運動への参加を訴える。

2012年7月25日

全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和

 
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