【談話】人事院は、「労働基本権制約の代償措置」を果たしていない
− 2012年人事院勧告にあたっての談話 −
本日8日、人事院は、政府と国会に2012年賃金勧告などを提出した。その内容は、月例給、一時金とも改定を行わないとするものである。
全労連は、そのような勧告は、公務員労働者の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度の役割を果たすものではなく、政府による賃下げ強行という労働基本権蹂躙の暴挙を追認するものに外からないと考え、強い抗議の意思を表明する。
人事院は月例給について、本年4月1日時点での国家公務員給与の平均額が、民間企業の従業員賃金のそれを7.67%も下回っていることを把握した。にもかかわらず、その較差は、「(国家公務員給与の)減額支給措置は民間準拠による改定とは別に未曾有の国難に対処するため、平成25年度末までの間、臨時特例として行われている」と断じ、勧告に結びつけようとしなかった。
人事院は、架空の金額である減額前の国家公務員給与が民間従業員賃金を「0.07%(273円)」と僅かに上回っているが、その較差では俸給表の改定が困難だとし、勧告を見送った。
一時金については、国家公務員の年間一時金月数(3.95月)と民間企業従業員の支給割合(3.94月)が均衡していることを理由に、改定を見送った。その際、国家公務員の2012年6月期の一時金が減額されていることは考慮されていない。
民間準拠方式で官民の労働者の賃金水準を均衡させるのが人事院勧告制度であり、実際に支払われた賃金を比較しなければ「正確な較差」は算出できない。これまでの勧告は、4月1日時点の官民賃金較差を埋め合わせる内容で行われてきた。国家公務員の賃金減額措置については、国公労連が、労働基本権侵害として裁判で争っている。
これら点を考慮すれば、「7.67%」の賃金改定を求めることが、勧告制度の大道だと考える。その点での十分な説明もないままに、減額措置を講じた特例法をオウム返しにするだけの勧告は、政府の暴挙を追認するものと言わざるを得ない。
勧告では、55歳以上の職員の昇給停止や、昇格の際の給与額増加の抑制策など、昇給・昇格制度を改定する国家公務員法「改正」を求めている。
人事院は賃金勧告とあわせ、高齢期における職員の雇用問題や人事行政上の諸課題への取組、職員の勤務環境の整備など、多方面の公務員制度改革課題に言及する報告も行っている。
賃金原資の配分問題でもある昇給・昇格制度や、他の制度課題は、公務員労働者の働き方の基本ルールに関わるものとして、労使が真正面から論議すべき課題である。既に、国会に提出されている国家公務員制度改革法案では、それらの課題は公務員庁の所管とされている。現行制度の見直しが論議されている時に、現行制度を拠りどころにした人事院のたち振る舞いには、率直な違和感を覚える。公務員制度改革が、政府と人事院の「二重行政」の弊害による混乱をさらに深めることのないよう、人事院の自重を求めたい。
2012年8月8日
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