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【談話】貧困根絶・格差是正の視点での目安審議を
― 2012年度地域別最低賃金額改定の答申をふまえた談話 ―

1.9月10日、各地の地域別最低賃金改定額の答申が出そろった。引上げ額は地方により5〜14円で、二桁台の改定を答申したのは、生活保護との乖離を指摘された北海道、大阪(各14円)、東京、神奈川(各13円)、埼玉(12円)、宮城、兵庫(各10円)の7地方であった。
 改定予定の金額水準をみると、雇用戦略対話合意が「早期に確保すべき」とした800円台は、東京(850円)、神奈川(849円)、大阪(800円)の3地方にすぎず、700円台が15地方、600円台は29地方にのぼる。最高額と最低額の格差は198円23%もある。改定予定額でも、依然として低賃金の蔓延と、大きな地域間格差の問題は残されたままであり、これでは不十分との異議申立が上がるのは当然である。

2.今年の審議は、中央の目安が「Aランク5円、BCD各ランク4円」と低水準であったため、改定額は全体として抑制気味となった。しかし、そうしたなかで、38の地方審議会が目安に1〜4円の上積みをした点は、大いに注目すべきである。岩手、富山、沖縄は、目安に倍する4円を上積みして8円アップを答申した。目安に3円上積みして7〜8円の引上げを答申した地方は16を数える。これら目安上積み3円以上の19地方のうち、12地方はDランク県である。低額最賃の地方が、目安を乗り越えた結果、全国加重平均は749円と前年より12円高くなり、目安平均の7円を5円も上回った。

3.4円、5円の目安に対し、多くの地方審議会が3円、4円も上積みしたということは、「目安は地方の感覚からズレている」と宣告されたに等しく、中央最低賃金審議会は事態を重く受けとめるべきである。中央の目安審議は、工業統計重視のランク制度で格差を正当化し、低額目安を地方に押し付け、「Dランク地域は低くて当然」との目線がある。その上、労働コストの抑制ばかりを主張する使用者側に引きずられ、地域の労働者の生活や地域経済への目配りが希薄である。従来、目安に“従順な”答申を出してきた地方審議会が、上積みを決意した背景にはこうした点への批判がある。中央最低賃金審議会は、今年の目安審議の結果を反省し、そのあり方を見直すべきである。

4.目安審議の見直しにおいては、まず、賃金改定状況調査第4表の使い方を再考し、当面、その使用の凍結を決断すべきである。事業所規模29人以下の中小零細企業の平均賃金の変化率を使って目安改定額の基準を算出することは、2007年に改正された最低賃金法の趣旨からみて不合理である。第4表をもとに中小零細企業の賃金変動率と最低賃金を長く連動させてきた結果、最賃は低額に抑えられ、最低賃金制度を機能不全に陥らせている。こうした事態に対し、国会は最低賃金をまともな水準へと更生させるため、最低賃金法の改正を実施した。最低賃金法の中に、憲法25条の条項をあえて書き込んで生計費原則を強化し、その具体化のために生活保護との整合性という手法を盛り込んだ。この趣旨をふまえるならば、600円台の地方が62%を占める今の段階で、中小零細企業の賃金動向との均衡に重点をおく目安審議はできないはずである。

5.同時に、生活保護と最低賃金との比較・算定方法も適正化するべきである。今の方法は、(1)実質的に残業時間含みとなる173.8時間をかけて最低賃金月額を水増しし、(2)沖縄の公課負担率を他の地方にあてはめて可処分所得を水増しし、(3)県内の低い級地も考慮することで都市部の労働者に生活保護基準以下の生活保護を適用して計算し、(4)制度にある勤労必要経費の計算を無視し、(5)実際の家賃とかけ離れた住宅扶助の支給実績値で住居費を過少に見積もるといった数々のごまかしをしている。これらを是正した計算を行なえば、全国どこでも最賃1000円以上という目標の正当性は明白となる。それは、雇用戦略対話合意の目標の妥当性を証明するものでもある。
 厚生労働省と中央最低賃金審議会には、今年の最賃改定審議を振り返り、「全国一律最低賃金1000円以上」の要求の正当性を認め、迅速な対応を行なうことを求めたい。

2012年9月12日

全国労働組合総連合
事務局長  小 田 川 義 和

 
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