【談話】公務員労働者の政治活動自由の拡大を求める
12月7日に最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は、国家公務員労働者が休日に職場から離れた場所で政党のビラを配布し、国家公務員法違反(政治行為の制約を期待した第102条違反)に問われていた二つの事件(「国公法弾圧堀越事件」、「世田谷国公法弾圧事件」)について、それぞれ上告を棄却する判断を行った。
この判決により、「堀越事件」は無罪が、「世田谷事件」は罰金10万円の有罪が確定した。
同種の事件で異なる判決が下されたのは、最高裁が国家公務員の政治活動を厳しく規制する国家公務員法第102条(政治行為の制限)と人事院規則14‐7の諸規定と、それらへの違反行為に対する刑事罰を規定した国家公務員法第110条を合憲とする前提に立って判断を行ったためである。
最高裁判決では、「表現の自由は、民主主義を基礎付ける重要な権利」と位置付け、憲法第15条との関係もふまえた国家公務員法の適用は「職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかどうか」を判断の基準とするとした。
この点では、国家公務員の政治行為制限違反を一律に罰することを追認した最高裁大法廷判決(猿払事件判決・1974年)を事実上変更する意義ある判決と言える。
しかし同時に、国家公務員法の違憲性にふみ込む憲法判断を回避したため、「管理職的地位あるかどうか」を無罪と有罪の分岐点にするという納得性の乏しい不当な判決でもある。
判決につけられた反対意見では、「世田谷事件」についても「一市民として行動している」と考えて「無罪とすべき」と主張した。無罪を出した「堀越事件」の東京高裁判決は、公務員の政治的中立性に対する国民意識の変化を指摘している。このこともふまえ、最高裁判決も契機に、国家公務員の政治的行為の制限を全面的に見直し緩和するよう主張する。
その際、2008年に国連の自由権規約委員会が「懸念」を表明し、国連の機関であるILO(国際労働機関)の条約(第105号条約・強制労働の廃止に関する条約)に抵触している「政治的行為違反に対する罰則規定(国家公務員法第110条)」を速やかに廃止することが、一連の判決が政府と国会に投げ返した課題であると強く指摘する。
今回の判決で、大阪市が職員の政治活動を国家公務員並みに規制するために制定した「職員の政治行為の制限に関する条例」(2012年7月)の不当性が改めて明らかになった。
また、現在たたかわれている総選挙で、地方公務員の政治行為の規制を国家公務員並みとすることを主張する自民党公約の反憲法性も指摘されるものである。
今回の判決の前進面を活用して労働組合が、公務員労働者の政治活動の自由を拡大する取り組みを強めることの重要性を確認する。要求実現の場と位置付けた取り組みを強めている総選挙でも公務員労働者の政治活動の自由を取り戻す取り組みを前進させ、それと一体で公務員労働者の権利回復めざす運動を再強化するよう、全国に仲間に呼びかける。
2012年12月12日
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