【談話】雇用、くらしの安定と改善こそ重視すべき経済対策だ
− 安倍政権の緊急経済対策決定にあたっての談話 −
政府は1月11日、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(以下「緊急経済対策」という。)を閣議決定した。
「機動的な財政政策」、「大胆な金融政策」、「成長戦略」の「三本の矢」で円高・デフレ経済からの脱却をめざすとする緊急経済対策の特徴の第一は、事業規模20.2兆円、そのうち10.3兆円を2012年度補正予算で措置するという大規模な財政支出である。その予算を確保するため、新たに5.2兆円もの建設国債を発行するとしている。
第二は、「明確な物価目標のもとで、日本銀行が積極的な金融緩和を行うことを強く期待する」として、「通貨の番人」である日本銀行に通貨量の増加による金融緩和を迫るという「禁じ手」に踏みこんだ金融政策である。
第三は、「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざすなどとして、環境、医療などの分野を中心に「大胆な規制改革」をおこなうことなどを盛りこんだ成長戦略である。
これら三つの施策は、2000年代初頭からの小泉「構造改革」でとられた供給サイド重視の施策と全く変わらない。「構造改革」が今なお労働者を苦しみ続けていることからしても、全労連は今回の緊急経済対策を評価することはできない。大幅な見直しを求める。
10.3兆円の予算のうち、3.8兆円は復興・防災を名目に、1.8兆円は民間投資喚起を名目にする公共事業費が占めている。くらしの安心確保のためとして「道路の無電柱化の推進」や「都市公園等の整備」が盛りこまれ、地域活性化の名目で「都市鉄道ネットワークの利便性の向上」が措置されるなど、多額の税金が不要不急の開発に使われようとしている。
一方で、人材育成・雇用対策には0.3兆円しか措置されず、その内容も非正規労働者の職業訓練費用の助成など効果が疑問な企業支援策となっている。
福島原発事故の除染事業に携わる労働者に渡るべき危険手当を事業者がピンはねしていることなど、「ブラック企業」が公共事業費にたかっていることが指摘されている。そのようは不当な雇用関係を是正しないままの企業助成策では、労働者に対策の効果は回らない。
日本の金融政策は1999年以降、事実上の「ゼロ金利」状態が10数年続いている。その結果、企業の手元流動性資金は潤沢にもかかわらず、労働者の賃金、雇用の改善や設備投資を通じた国内還元には回っていない。この点を是正しなければ、労働者・国民の生活を苦しめているマネーゲームに資金を供給するだけの結果にしかならない。
デフレ経済克服のための経済対策を大胆に実施するというのであれば、電機産業などで強行されている大規模なリストラをやめさせ、中小零細企業を対象に最低賃金1000円を実現するための支援策を講じるべきである。大幅賃上げや非正規労働者の正社員化を財界・大企業に求め、公共事業費のムダ遣いやピンはねを厳格に規制する公契約法・公契約条例を整備するなど、壊れている富の再配分機能を修復する施策を同時に実施するよう強く求める。
2013年1月13日
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