【談話】身勝手な財界主張への批判と反撃を強めよう
2013年版「経営労働政策委員会報告」に対する談話
1月21日に経団連は、「2013年版 経営労働政策委員会報告」(経労委報告)を発表した。
「活力ある未来に向けて〜労使一体となって危機に立ち向かう〜」と題された経労委報告は、製造業大企業などの国際競争力強化のために労働者、国民のくらしや地域経済を壊し続けたことへの反省なしに日本経済の危機を煽り、企業への「従属」を労働組合に迫るという身勝手な主張に貫かれている。全労連は、そのような経労委報告に厳しく対立する立場で、批判と反撃を強める。
経労委報告の主要な問題点は以下の点である。
第一に、年収200万円にもみたない賃金で働かされる労働者が1000万人をこえ続けている貧困化の深刻な実態や、2011年だけでも2万5000件を超えて廃業するという中小企業経営の困難さには一切言及していない。
日本銀行の調査でも、2012年9月末時点で、民間企業(金融機関を除く)が持つ金融資産は729兆円もの巨額にのぼり、その内の215兆円(27.5%)が現預金が占めている。このような異常な「カネ余り」状態には一言も触れずに、企業の事業活動の厳しさを強調することに同意などできるはずはない。
第二に、日本経済の状況を「長年にわたるデフレ下の停滞」とし、その一例として名目GDPが1997年比で50兆円以上も低下したことに言及する。しかし同時期に、民間企業の労働者に支払われた賃金総額が約25兆円も低下し、個人消費が落ち込んだことには全く触れていない。そればかりか、個人消費が落ち込んだ理由を「国民の将来に対する不安」だけに求めている。
企業経営を圧迫するとして「2030年代の原発稼働ゼロ」をめざすとする政府決定の見直しを求めている。そこには、目先の経済効率を追求して安全対策を軽視し、福島原発事故を引き起こした日本が企業経営への反省は微塵もない。
経労委報告が身勝手な利潤追求の塊で、破廉恥で無反省な財界の傲慢な姿勢に貫かれていることは、この二つの例だけでも明らかである。
第三に、政府に対し、「就業規則の不利益変更ルールの透明化」、「自律的労働時間管理を可能とする仕組み導入などの労働時間制度改革」、「最低賃金決定にかかわる雇用戦力対話の抜本的見直し」など労働法制の規制緩和を求めている。雇用の流動化をさらに加速し、最低労働条件規制を底抜けさせるこれらの主張には断固反対する。
また、2013年春闘への対応では、「付加価値の配分を設備投資など企業維持に必要な部分を優先して確保」し、その上で総額人件費を「適切に管理する」ことを強調している。労働者の現状をふまえれば、この姿勢を改め、雇用の安定と賃金改善こそ優先すべきである。
「ベースアップは実施する余地はない」、「定期昇給の実施時期の延期や凍結について協議せざるを得ない」など、賃金引き下げ、抑制の姿勢は改めるよう強く求める。
第四に、「非正規労働者の処遇、とりわけ賃金は、労働市場の需給関係の影響を受けることをふまえる必要がある」とし、正社員と非正規労働者を差別して取り扱うことを当然のように主張している。このような雇用形態による差別扱いこそ、今の日本社会を覆う閉塞感や、労働者の分断と対立を煽る大本にある主張である。社会的正義にも、憲法が定める基本的人権にももとり、国民経済の健全な発展を阻害する経営委報告の不当性を象徴する記述として厳しく指弾する。
2012年1月22日
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