【談話】「第39期北海道労働委員会労働者委員任命取消裁判」判決にあたって
12月26日、北海道を相手取って道労連などが訴えていた「北海道労働委員会労働者委員任命処分取消等請求事件」(平成23年(行ウ)第20号)の判決が札幌地裁で出された。
同地裁は、任命取り消し請求については原告適格を認めず、損害賠償請求についても訴えの利益がないとして、いずれも棄却した。しかし、判決では、北海道知事が行った任命処分は「労働組合法上の推薦制度の趣旨を没却するもの」として「裁量権の逸脱・濫用にあたる」違法なものであることを認定するという、事実上の勝利判決となった。北海道労連などは、判決を評価して控訴せず、1月9日に確定した。
札幌地裁の判決は、「推薦労働組合の所属人数等にしかるべき配慮を払った形跡は見受けられない」、「第38期労働者委員の再任を前提に行動している」、「労働者委員の経験については具体的な職務遂行状況や資質等の評価がなされたとはにわかに認めがたい」ことを事実認定し、「原告の道労連やほかの労働組合の構成員数などに配慮を払うことなく、全員連合系の候補者である現職の労働者委員を再任すべき特段の事情も窺がわれない」と連合に労働委員会の委員を独占させることの合理性を否定している。
判決では、「第37期(取消裁判)判決の説示を踏まえて、これを考慮した形跡がいささかも見受けられない」として、従前の司法からの連合独占の非合理性に対する指摘を考慮していないことも避難している。
そして、これらの点をふまえて、任命行為が「裁量権の逸脱・濫用にあたる」断じている。
これらの点で判決は、「門前払い」ではなく、詳細な事実認定のうえに、連合推薦者のみを繰り返し労働委員会の委員に任命し続けることの不当性を断じたものと言える。
この間、中央労働委員会や都道府県労働委員会の労働者委員の任命をめぐって司法判断を求めてきた。委員の任命行為が知事などの裁量権に委ねられるとしても、「推薦された者の一部を全く審査しなかった場合」や「実質的に審査の対象から除外した場合」には、裁量権の逸脱・濫用にあたるという判断基準はほぼ確立している。しかし、多くの判決は、今回の判決のような事実についての詳細な検討を行わず、むしろ系統別の任命を考慮しない不当性を指摘しないものが少なかった。
そのような中で、千葉県労連等が訴えた事案での東京高裁判決が、長期間にわたり同一系列だけから委員を選任することの不当性を指摘し、福岡県労連等が訴えていた事案では福岡地裁判決が「県労連に加盟する労働組合推薦の候補者であるという理由」で不公正任命がおこなわれたことを認定した。
今回の札幌地裁判決は、この間の裁判闘争でかちとった到達点を前進させたものと言える。
今回の判決も踏まえ、全国的に労働委員会労働委員の公正任命を求める取り組みを再強化させる必要がある。都道府県労働委員会の推薦運動を再度強めて全都道府県に広げ、公正任命を求める行政闘争強化につなげる。各都道府県労働委員会へのたたかいと一体で、中央労働委員会での公正任命を求める取り組みを労働委員会民主化対策会議の統一運動として強化する。
たたかいの到達点を成果に結実させるため、粘り強く継続的なたたかいを再構築する決意を表明する
2013年1月17日
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