【談話】労働者、国民に「痛み」を押し付ける経済、財政政策に断固反対する
− 経済財政諮問会議「骨太方針」の閣議決定にあたって −
本日6月14日、政府は「骨太方針」を閣議決定し、「デフレ脱却と日本経済再生」をめざすとする諸施策を内閣主導ですすめるとした。
同方針では、2013年度から2022年度の平均で名目GDP成長率3%程度、一人当たりの名目国民総所得は10年後に150万円以上拡大、などなどの「数字つきの政策目標」が数多く盛り込まれている。しかし、盛り込まれた施策は、TPP参加や労働法制、投機規制の緩和などにより多国籍大企業に国内市場を開放し、原発などのインフラ輸出を加速させるために政策資源を投入することなど、徹底した大企業むけの施策内容である。その一方で労働者、国民には、財政再建を口実に消費税増税と社会保障の大改悪などの痛みを押し付けようとしている。
「企業栄えて民滅ぶ」政策のオンパレードであり、安倍政権が経済政策の「柱」だとするデフレ不況克服を期待することはできない。
また、既に実施されはじめている「異次元の金融緩和」での日銀の国債保有の上昇と、国土強靭法の名による財政のばら撒きによって財政が破たんし、国民に堪え難い痛みを強いる結果になることも強く懸念する。
全労連は、「骨太方針」の決定に強く抗議し、その実行に反対することを表明する。
「骨太方針」では、90年代からのデフレ不況の原因を低成長と内外の金利差に求め、景気低迷が企業の投資意欲を委縮させたとしている。このような分析では、世界で唯一賃金が低下し続けたことや、デフレ不況下でも企業の内部留保の高蓄積が進んできたことは説明できない。現状の正確な分析なしに、まともな処方箋を書くことはできるはずもない。
また、「異次元の金融緩和」と公共投資というアベノミクスの第一の矢、第二の矢が、実施後間なしに失速し、2013年度の景気回復すら見通せなくなっているが、この「破たん」についても一言も言及していない。自らの政策の失敗を認めずに、目標数字だけを躍らせる「ハリボテ政策」は、目前に迫った参議院選挙向けのパフォーマンスの域を出ていない。
「骨太方針」の中心は、内外からの民間投資の拡大と、企業の勝手気ままな「活動」の自由を拡大する規制改革、そして企業の海外進出も含めた世界の経済成長の取り込みという「成長戦略」である。
これらの施策は、90年代半ばから繰り返し、言葉を変えて強行されてきた。その結果、一部の大企業は多国籍化し、一握りの富裕層を作り出し、経済のバブル化は進んだが、多くの労働者は所得低下、社会保障の改悪、増税に苦しめられた。職につくために新卒者が、数百万規模の借金を抱えると言う「競争社会」の行き過ぎも深刻化した。
この間の「構造改革」路線によって壊された労働者、国民の生活が修復する施策もないまま、労働者保護規制を緩和して雇用流動化をさらに進め、あらゆるモノ、サービスを民間に開放して「商品化」を加速すれば、格差と貧困が極限まで進行することは必至である。
「骨太方針」では、経済再生と同時に財政再建を両立させるとし、消費税増税を既定のこととして社会保障給付の削減を徹底するとしている。特に、年金給付でのマクロ経済スライドの実施など、高齢者への給付削減が強調されている。後期高齢者医療制度導入で批判された「姥捨て山政策」を復活、強化しようと言うものであり、生存権さえ侵害する暴挙である。
企業活動中心の経済政策で労働者、国民に痛みを押し付け、財政再建では暮らしを直接壊す内容の「骨太方針」は断じで強行させてはならない代物である。
参議院選挙で明確に「ノー」の審判を下すたたかいを強める決意を重ねて表明する。
2013年6月14日
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