【談話】社会保障制度の総改悪をねらう国民会議報告書に抗議する
政府の社会保障制度改革国民会議(座長:清家篤慶應義塾大学長)は本日5日、報告書をとりまとめた。明日には安倍首相に報告される予定だが、制度改革といいながら何の充実策もなく、医療・介護、年金、保育の全分野にわたって新たな負担とガマンを強いる改悪一辺倒の内容となっており、断じて容認できない。全労連は、その撤回を強く求めるとともに、具体化を許さない国民的なたたかいを呼びかける。
報告書はまず、「『自助』を基本としながら…『共助』が自助を支え、自助や共助では対応できない困窮などの状況については、受給要件を定めた上で必要な生活保障を行う公的扶助や社会福祉などの『公助』が補完する仕組み」と説明し、「我が国の社会保障制度においては…『自助の共同化』としての社会保険制度が基本」としている。憲法に反して、社会保障に対する国の責任を棚上げし、「自己責任化」をすすめるものとして強く批判されねばならない。
具体的な内容では、医療・介護の分野では保険料の引き上げとともに、70〜74歳の患者負担の2割への早期引き上げや一定所得以上の介護利用料の引き上げ、さらに要支援の保険外し(市町村まかせの地域包括事業化)など公的保険範囲の縮小、国の負担削減の仕組みづくりである保険制度の都道府県単位化などが大改革メニューが並んだ。年金でもマクロ経済スライドの毎年実施や、支給開始年齢のさらなる引き上げの中長期的課題としての検討が、また、保育では公的責任を投げ捨てる新システムの推進や営利企業の参入拡大などが掲げられた。
一方では消費税率の引き上げを策しながら、もう一方では社会保障制度の総改悪であり、二重三重に許しがたい報告書といわざるを得ない。また、高齢化の進行を問題視し、世代間の分断をあおり、お年寄りへの給付の抑制をねらうものとなっている。
こうした大改悪が打ち出された背景として、社会保障制度改革推進法(社会保障解体法)という制度改悪の指令書の存在を指摘せねばならない。同法は、昨年夏の民自公三党合意によって成立したものであるが、憲法25条を棚上げし、社会保障の自己責任化を基本にしている。今回の報告書でも同法の弊害はますます明らかである。
医療・介護や年金、保育、さらには生活保護など、各分野から憲法をないがしろにした具体化を許さない国民的な共同と反撃を強めるとともに、その根っこにある推進法そのものの廃止を求める世論の構築が重要である。そうした国民的な世論と運動の構築に向けて、全労連も奮闘する決意である。
2013年8月5日
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