【談話】「ナチス政権の手口」云々の麻生副総理発言は「ごまかし答弁書」で不問にはできない
政府は8月13日の持ち回り閣議で、麻生副総理の「ナチス政権の手口」発言について、政府答弁書を決定した。
同答弁書では、「ナチス政権下でワイマール憲法が十分な国民的理解と議論のないまま形骸化された悪しき前例として挙げたところであり、ナチス政権の手口を踏襲するとの趣旨ではない」とし、発言を不問に付す姿勢を示した。
7月29日の改憲問題での講演会で、麻生副総理が「「ワイマール憲法という当時のヨーロッパで最も進んだ憲法下にヒトラーが出てきた……ある日気づいたらワイマール憲法が、ナチス憲法に変わっていたんですよ。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうかね」と発言していることは、録音にもとづき詳細な報道がなされており、覆い隠しようもない事実である。改憲論議は国民や諸外国に知られないように静かにやりたいとの文脈で、「誰も気づかないうちに改憲したナチスの手口に倣いましょう」とも述べており、発言の意図は極めて明確である。
政府の答弁書は、身内をかばうために「黒を白と言いくるめる」ものであり、国内外からの批判に応えておらず、到底理解の得られるのもではない。
麻生副総理の発言は、ヒトラーによるワイマール憲法の「改正」(立法権を国会から政府に移す全権委任法の制定)が、「静かな状態」で行われたとする誤りがあることを多くの識者が指摘している。
歴史の事実は、国会議員647人の内81人を占めていた共産党議員をねつ造事件を口実に議会から放逐し、国会周辺をナチスの軍事組織などが包囲する「異常な事態」の中で全権委任法が成立させたものである。権力によって「静かな状態」を作り出し、強引にファシズムへの道を開いたのが事実である。
麻生副総理は、その発言で、自民党の憲法改正草案の策定経過を紹介し、その草案を「静かな状態」で成立させたい、との趣旨も述べている。この点もふまえれば、麻生氏の発言は、ヒトラーの手口を「踏襲したい」との願望を述べているとさえ、受けとめられるものである。
安倍政権は、先の臨時国会で、麻生発言についての集中審議を拒否し、野党5党からの罷免要求も受け取らなかった。その際は、麻生氏自身が発言を訂正したことをあげ、「問題にすべきでない」としていた。しかし、国内外から高まる批判に抗しきれないことから、発言の趣旨を捻じ曲げる答弁書で事態の幕引きを図ろうとしている。
開かれた場での意見をたたかわして事実を明らかにし、副総理という要職に就くことがふさわしくない発言であるか否かを国民にも、国際的に明らかにし説明するという立場に立たなければ民主主義は気のせず、権力を持つものの独善だけが残ることになりかねない。麻生発言に対する安倍政権の対応そのものが、民主主義の基本を逸脱している。
麻生副総理の発言は、第2次世界大戦を引き起こした側に立つ日本の政治家として容認され得る範囲をこえている。その点を確認し、政府は答弁書を撤回し、麻生氏に議員辞職を促すよう、強く要求する。
2013年8月14日
|