アメリカ合衆国大統領
　バラク・オバマ　様

シリアへの軍事攻撃を行わないことを求める要請

　内戦が続くシリアで、オバマ大統領は政府軍が反政府勢力に対して化学兵器を使ったとして、シリアへの軍事攻撃を行うことを表明し、連邦議会にその承認を求めています。
　化学兵器の使用は、人道と国際法に反する残虐行為であり、何人にも許されないものです。しかし、化学兵器の使用がいかに非人道的行為であったとしても、それを名目として他国に武力介入することは許されません。
　オバマ米政権が国連安保理の承認なしにシリアに対する軍事攻撃を検討していることについて、国連の潘基文事務総長は３日、「あらゆることが国連憲章の枠組みで処理されなければならない」と、国連憲章を守るようニューヨークの国連本部での会見で述べました。また、潘氏は「いかなる状況であれ化学兵器の使用は重大な国際法違反であり、言語道断の戦争犯罪だ」と批判しました。そのうえで「シリアをめぐる今後のいかなる行動も、科学的な分析結果に基づいて、安保理が検討しなければならない」と指摘。「武力行使が合法なのは、国連憲章第５１条に基づく自衛の場合と安保理が認めた場合だけだ。それが国連憲章の確固とした原則だ」と語り、名指しは避けながら米国の姿勢を厳しく批判しました。
　オバマ大統領は、限定的な軍事攻撃を議会に承認するよう求めています。一方、３日発表の米ワシントン・ポスト紙とＡＢＣテレビの合同世論調査によると、米国によるシリアへのミサイル攻撃に反対する人は５９％に上り、支持の３６％を大幅に上回っています。
　そもそも、内戦に対する軍事介入は、平和秩序の回復につながらず、さらなる暴力の連鎖と人的被害、化学兵器拡散の危険を生み出すものです。それは、「大量破壊兵器の破壊」を名目にして、アメリカを先頭にイラクへの軍事介入を行い、テロと暴力の連鎖が終わらない現状をみれば明らかです。
　いま国際社会がなすべきことは、国連が中心となって、シリアでの化学兵器使用をめぐる事実を明らかにし、国際社会が一致して化学兵器の廃棄を迫ることである。そして、シリア政府と反政府勢力双方の政治対話を促し、国連憲章に基礎をおいてとり得るべき平和的手段を実行することです。
　私たちは、オバマ大統領が表明した、シリアへの武力行使の言明を撤回するとともに、連邦議会に対する武力行使の承認を撤回するよう強く求めるものです。