【意見】「特定秘密の保護に関する法律案」概要に対する意見
標記法律案のパブリックコメントに関し、断固反対の立場から下記の意見を申し述べる。
(1) まず、パブリックコメントの募集期間について、これほど重要な内容であるにもかかわらず、わずか2週間という短期間で行うことに対し、十分な意見反映を保障する立場から抗議するものである。
(2) 法案の保護の対象となる「特定秘密」の範囲が曖昧であり、行政機関等の裁量による行政情報の秘匿によって、主権者たる国民の知る権利が侵害されることが強く懸念される。
法案概要では、「我が国の安全保障に関する事項のうち特に秘匿することが必要であるもの」を保護すべき行政情報とし、(1)防衛に関する事項、(2)外交に関する事項に加え、(3)外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項、(4)テロ活動防止に関する事項の四つの類型をあげている。
例えば、防衛に関する事項では「防衛力の整備に関する見積もり若しくは計画又は研究」も列記されている。自衛隊の装備のあり様は、憲法第9条の制約との関係でも、国民の監視が必要な極めて重要な事項であるが、それを特定秘密として防衛省によって指定される余地を残している。
また、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉では守秘契約にしばられ、その交渉内容や日本政府の主張も明らかにされていないが、これらが安全保障ともかかわるとして、外務省などが特定秘密に指定することも懸念される。
さらに、「特に秘匿することが必要であるもの」という特定秘密の規定自体が、情報を把握している側の裁量を広く捉えていると考えられる記述である。
なお、政府は2007年に「特定管理秘密」の管理について決定し運用を行っている。その運用状況に対する質問に対しても「何が秘密かが秘密」との回答を行っており、前述した点が単なる懸念にとどまらないことを自ら公言している。
(2) 法案では、特定秘密の取り扱いの業務を行うことが見込まれる職員若しくは契約業者の役職員又は都道府県警察の職員についての「適正評価」の実施が規定されようとしている。
国家公務員のみならず、民間事業者の従業員なども対象に、適正評価を口実に、「精神疾患」や「飲酒の節度」、「信用状態」など個人のプライバシーの詳細を国家が把握する内容は、私生活への国家の過剰な介入であり、基本的人権を著しく侵害する規定である。
なお、前述した「特別管理秘密」の運用でも、「秘密取扱者適格性確認制度」が盛り込まれ実施されている。2012年7月の衆議院内閣委員会での質疑によれば、2009年以降、少なくとも5万3000人の国家公務員が同制度の適用対象として調査対象とされたことが明らかになっている。これから類推すれば、法の影響を受ける国民の範囲が限定的なものではなく、極めて広範囲に及ぶ危険を内包している。
(3) 法案では、「特定秘密」の過失による漏えいやその未遂、あるいは「特定秘密」を漏えいするよう教唆又は扇動した場合も処罰の対象になるとしている。
刑法第134条や国家公務員法第100条などに定められる守秘義務は、職務上知ることのできた秘密を故意に漏えいすることのみを禁じている。
これに過失を加え、さらに秘密を聞き出そうとする行為まで罰則対象とすることは、「特定秘密」を口実にした言論の自由への弾圧に口実を与えることが容易に想定される。
罰則の対象となる事由が広範であることは、国民からすれば国家による威圧であり、法案は民主主義を抑圧するものであることが容易に想定される。
したがって、「特定秘密の保護に関する法律」の制定には、いかなる理由をもってしても断固として反対する。
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