【談話】消費税率引き上げの中止を強く求める
昨日10月1日、安倍首相は、来年4月からの消費税率引き上げ(5%→8%)を予定通り実施する「決断」をしたと表明した。
各種の世論調査の結果でも、世論の多数は消費税増税反対の意思を示している。にもかかわらず、開かれたまともな論議もなしに、かつてない8兆円規模の大増税を国民に強いる「決断」に強く抗議する。
全労連は、「決断」の撤回、消費税率引き上げの中止を求め、引き続きたたかいを継続する決意を表明し、すべての労働者にたたかいへの結集をよびかける。
改正消費税法附則第18条では、消費税率の引き上げは「経済状況の好転」が条件となっていた。政府の諸統計では、大企業の業績回復は伺えるものの、雇用の大半を支える中小零細企業の経営は依然として厳しいまま、改善の兆しは見えない。
8月の完全失業率は前月比で0.3ポイント悪化し、4.1%・272万人となった。労働者の賃金(現金給与総額)は前年比で0.6ポイント低下し、決まって支給する給与(所定内賃金)は15カ月連続して前月比で低下し続けている。一世帯当たりの消費支出も、8月は前年同月比で1.6%減少している。
労働者、国民の生活改善が全く進んでいないことは明らかであり、「(消費税率引き上げの)環境が整った」などと言える状況にはない。その点で、安倍首相の「決断」は、法の定める要件を欠いている。
安倍首相は、消費税率引き上げの「決断」とあわせ、増税の悪影響を避けるために6兆円規模の経済対策を講じる方針を明らかにした。増税のために「新たな経済対策」を講ずるという政策は、それ自体矛盾した政策である。
同時に、検討されている経済対策は、その効果が一部の大企業に集中する内容であり、実質は消費税増税を通じた国民から大企業への富の移転を促進するものにほかならない。
経済対策の中心は復興特例法人税廃止の1年前倒しの検討であり、東京オリンピックも念頭においたインフラ整備のための公共投資である。消費税増税は社会保障財源確保や財政再建のためではなく、大企業優遇と公共事業による利益誘導のための財源確保であることも極めて明白になった。消費税増税は社会保障財源確保のためという「大義」ですら投げ捨てられている。
また、賃上げを企業に誘導する所得拡大税制なども検討課題とされている。その内容は、退職者や新入社員を除いた従業員の給与総額を2%以上増やした企業の法人税の一定割合を控除するとしている。
定期昇給のある大企業にこれを当てはめれば、定期昇給を実施するだけで要件を満たすことになる。
中小企業をはじめ7割の企業は、法人税を納税することすら困難な経営状況にあり、そのような税控除の恩恵を受けることは出来ない。
経済政策の内容を子細に検討すれば、税制度での賃上げ促進効果を期待することは全くできない。
識者の試算では、消費税3%の増税は2%の賃下げと等しく、安倍政権が掲げる「2%の物価上昇」には4%の賃上げが必要だと言われる。
安倍首相が強弁している「経済再建と財政健全化の両立」の達成をめざすのであれば、消費税増税を断念し、中小零細企業での賃上げを直接的に促す措置を実施して内需拡大による持続的な経済循環をめざすべきである。巨額な内部留保をため込んでいる大企業には、その取り崩しによる賃上げこそ迫るべきである。労働者・国民には増税を強制し、大企業には減税となる2014年4月からの消費税率引き上げと関連の経済対策の中止・撤回と、労働者・国民生活重視の政策への大転換を重ねて要求する。
2013年10月2日
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