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資源エネルギー庁長官官房総合政策課
        パブリックコメント担当宛

2014年1月6日

新しい「エネルギー基本計画」策定にかかわる意見

全国労働組合総連合
議 長 大 黒 作 治

【総論的な意見】
 総合資源エネルギー調査会政策分科会が取りまとめた「エネルギー基本計画に対する意見」(2013年12月)の内容は、以下に述べるように、多数の国民意見を反映しておらず、かつ、2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故への反省を欠くものであり、強く反対の意思を表明する。
 経済活動への影響のみが重視され、国民の命や健康、安全に対する慎重な検討と配慮を欠く「エネルギー基本計画」の策定は行わず、再生可能エネルギーと省エネルギーを組み合わせ、持続可能で地球温暖化にも配慮したエネルギー政策への転換を明確にする計画内容とするよう、再度の検討を要請する。

【各論的な意見】
1 国民の意思を反映した「エネルギー基本計画」の策定を求める。
 2012年8月中旬にかけて実施された「『エネルギー・環境に関する選択肢』に対するパブリックコメント」などでも明白なように、国民の多くは「原発ゼロの日本の実現」を強く求めている。
 政府は、主権者国民の意思を反映した政策を立案し、実施する責務を負っていることを再確認した「エネルギー基本計画」とすべきである。
 「エネルギー・環境に関する選択肢」へのパブリックコメントには、9万件を超える意見が寄せられ、87%が「ゼロ・シナリオ」を選択した。このことから、2012年9月14日に決定された「革新的エネルギー・環境戦略」(エネルギー・環境会議)では、「2030年代に原発稼働ゼロが可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」ことが決定された。
 政権の交替があったとはいえ、この間に実施された国政選挙において、政権与党はエネルギー政策を明確な争点とはしていなかった。
 したがって、「エネルギー基本計画」の検討にあたっても、先のパブリックコメントへの国民意見は最大限尊重されるべきである。「革新的エネルギー・環境戦略」の決定をスタート台に、その後に明らかになってきた原発事故収束作業や除染作業、原発廃炉、さらにはいわゆる「核のゴミ」処理などに必要となる多額な費用と時間、その国民生活への影響を加味し、高価で危険な原発エネルギーからの脱却、即時「原発ゼロ」を中心課題に位置付けた計画とすべきである。

2 福島原発事故の原因究明や、福島再生復興がエネルギー計画策定の「出発点」としながら、その具体論には全く触れず、あたら経済的な側面から、原発依存ありきの「エネルギー基本計画」となっており、この点の見直しを強く求める。
 福島原発事故収束作業の見通し、事故被害への全面賠償や被害者の健康管理体制など、福島事故処理についての言及もないままに、「(福島原発)事故の教訓を乗り越え」る計画の策定はできない。
 「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」と述べているが、その数的な目標や計画内容は全く明らかにされていない。
 そればかりか、「(原子力は)優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に引き続き活用していく、エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源」と位置付け、「世界で最も厳しい水準の新規制基準の下で安全が確認し、再稼働を進める」とし、「原子力に関する教育の充実を図る」とするなど、破たんした安全神話の再構築を図ろうとさえしている。
 このような、福島原発事故がなかったかのような検討姿勢は改め、真正面から原発事故の現状と、過酷事故による被害の甚大さ、事故処理の困難さなどと向き合った計画内容とすべきである。

3 「核燃料サイクル政策の着実な推進」に言及しているが、この間も巨額な経費を投入しながら失敗を繰り返してきた施策の検証もないままに固執し続ける姿勢を改め、同政策からの撤退を宣言するよう求める。
 プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工は、その危険性からして、撤退、中止こそ決断すべきである。
 特に、高速増殖炉・もんじゅについては、事業者の安全管理の不十分さ、トラブル続きという技術的な不完全さなどを冷静に判断し、これ以上のムダ遣いを避ける意味でも、即時撤退を宣言すべきである。
 将来的見通しに欠け、原発依存政策からの脱却を困難にしている「核燃料サイクル政策」に投入する予算、人員などは、再生可能エネルギーの開発、普及、転換の促進に充てることなどを明確にすべきである。

4 「原子力利用に伴い確実に発生する使用済核燃料」、いわゆる「核のゴミ」についての、処分方法に言及しないままに、原発推進の計画を立案しないよう求める。
 「エネルギー基本計画」では、「(核のゴミは)世界共通の悩み」だとして一般化しながら、日本においては「科学的知見が蓄積されている処分方法は地層処分」だと断定している。これを前提に「取組を進め」て、「今後より良い処分方法が実用化された場合に将来世代が最良の処分方法を選択できるようにする」と述べ、一方で次世代への問題先送りの姿勢を表明している。
 既に、日本学術会議などが、地層処分の不適当さを指摘しているにもかかわらず、現時点の処分方法としてそれを選択することの妥当性については、まともに説明がされていない。
 このような結論ありき、問題先送りの姿勢で、これまでの原発依存のエネルギー政策が進められてきたことが、福島原発事故の原因となったことを反省し、「トイレなき原発」稼働は行わない姿勢を明確にすべきである。

5 温室効果ガスの着実な削減と原発稼働ゼロを両立させる「エネルギー基本計画」の策定を強く求める。
 福島原発事故も口実に日本政府は、温室効果ガスの排出量について、「1990年比3.1%増」の削減目標を国際社会に提案し、大きな批判を浴びている。
 この点でも政府は、経済活動への悪影響を口実としたが、人類的課題である温室効果ガス削減について、一国の経済活動を口実にサボタージュすべきではない。
 先進国としての責任を全うする意味でも、再生可能エネルギー開発を先導する姿勢、メッセージを国際社会に発信する「エネルギー基本計画」を策定すべきである。

以 上

 
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