【談話】籾井NHK会長の「慰安婦」暴言に強く抗議する
NHKの新会長に就任した籾井勝人氏は、就任記者会見で「(慰安婦は)戦争しているどこの国にもあった」などと発言した。また、この発言に対する国内外から批判に対して菅官房長官は「個人としての発言」とし、任命責任を持つ安倍首相も黙認する姿勢を示している。
日本政府の公式見解とも歴史の事実とも異なり、「河野談話の見直し」が持論である安倍首相や日本維新の会・橋下共同代表などの特異な主張に与する極めて政治的な発言と言わざるを得ない。
NHK会長は、その影響力からしても「公人」にほかならず、国内外に与える影響は決して小さくない。
これらの点からして、発言は「放送の不偏不党、真実及び自立を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」を明記する放送法第1条2号に反するものである。
民主主義を擁護し発展させる上で、真実にこだわる公共放送の役割は重要であり、そのことを軽視する姿勢でNHKの経営が行われかねない懸念を高めた責任も重大である。
籾井氏に対して、発言に厳しく抗議し、NHK会長として不適格であることを強く主張する。政府は任命責任を果たし、会長職から籾井氏をはずすよう求める。
「慰安婦」は、第二次世界大戦中、日本軍や政府が直接関与して朝鮮半島などの女性を強制的に連行し、軍などが管理する慰安所に閉じ込め、「性奴隷」として扱った重大な人権侵害事案であり、それは動かし難い歴史の事実である。これを曲げる歴史の改ざんは、断じて許されない。
「慰安婦」を制度としてつくっていたのが、日本とナチス・ドイツだけであることも歴史的に検証されており、「どこの国でもやっていた」というのは誤りである。自国の行った行為を免罪するために、「どこの国でも」と偽りの発言を行うことも許されるものではない。
籾井氏の発言は、過去の事実と向き合わず、真摯な反省を欠いたまま、戦争ができる「普通の国」になろうとする動きの強まりを後押しかねないものであり、発言の撤回を強く求める。
昨年5月の橋下大阪市長(日本維新の会共同代表)の「慰安婦」発言も含め、事実を意図的に捻じ曲げる発言が放置され続けていることに、強い危惧の念を抱かざるを得ない。
政府は、「慰安婦」問題と正面から向き合い、国としての謝罪を行っている「河野談話」の立場で、国民啓発を強めるよう併せて要求する。
2014年1月28日
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