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【談話】使い捨て労働を常態化させ、すべての働く人々に影響する労働者派遣法「改正」法案要綱に強く反対する

1.労働政策審議会(会長:樋口美雄・慶應義塾大学商学部教授)は2月28日、労働者派遣法の一部「改正」法律案要綱(以下、「法案要綱」という。)について、「おおむね妥当」とする答申をおこなった。
 しかし、以下に述べるとおり、法案要綱の内容は労働法制の根幹を揺るがし、使い捨て労働を常態化させ、すべての働く人々に影響する大改悪であり、断じて容認できない。政府は、労働界や法曹界からも一致して反対意見が表明され、マスコミ等でも批判が強まっていることを重く受け止め、法案要綱に基づく「改正」法案の国会提出を潔く断念し、撤回するよう強く求める。

2.法案要綱の最大の問題点は、「臨時的・一時的な業務に限定する」という労働者派遣制度の基本的な考え方が覆され、大企業等がいつまでも労働者派遣の受け入れを継続することが可能になっていることである。
 派遣労働者が派遣元と有期労働契約の場合、派遣先企業は3年ごとに過半数組合等から「意見を聴取」しさえすれば、人を入れ替えていつまでも労働者派遣を受け入れることができる(法案要綱「八 3」「八 4」)。さらに、派遣元と無期労働契約の場合には、期間制限そのものがなくなる(同「八 1」)。常用代替防止の大原則は完全に形骸化されているのであって、労働者派遣法が労働者供給事業(人貸し業)を禁止している職業安定法第44条の例外であることからすれば、許されざる大改悪として厳しく批判されねばならない。

3.その影響は甚大であり、使い捨て労働を蔓延させるなど雇用のあり方そのものを変え、すべての働く人々に悪影響をもたらすことは明らかである。
 常用代替防止の大原則(期間制限)が外れることで、企業は、安価でいつでも使い捨て可能な労働者派遣への置き換えを急速にすすめることとなる。工場の生産ラインをはじめ、店舗の店員、営業マン……など、直接雇用の業務が労働者派遣に大々的に置き換えられていく。“正社員ゼロ法案”“非正規化促進法案”といわねばならない。
 そうなれば、現に派遣で働く人々の正規雇用への道はますます狭き門となり、新規学卒者も派遣が当たり前となるなど、“生涯派遣”というべき状況がひろがる。
 労働者派遣への置き換えの威圧のもとで職場の専制支配がすすみ、正規など直接雇用の労働者の労働条件も切り下げられていく。そして、港湾や建設、医療なども早晩、派遣全面解禁の危険にさらされる。また、激しいコスト競争のもとでは、良心的な経営者も派遣に切り替えるか、淘汰されるかの選択を迫られることになり、日本全体が労働者使い捨て社会になりかねない。

4.今次「改正」案は、日本経済にとっても重大なマイナス要因となることが明らかであり、この点でも断じて容認できない。
 上記のとおり、労働者派遣が急増し、使い捨て労働が常態化すれば、日本の雇用はいっそう不安定化し、失業状態の日常化と将来不安が大きくひろがることになる。また、大企業等が労働者派遣を拡大する最大の理由は人件費コストの削減だが、今次「改正」によって安価でいつでも切れる労働者派遣が急増すれば、正規をはじめ直接雇用の労働者の賃金も引き下げ圧力が強まる。労働者全体の賃金水準はさらに低下し、生活破壊と個人消費の減退、内需縮小という悪循環が深刻化する。安倍政権は経済の好循環を唱え、賃金を上げると喧伝しているが、実際にやろうとしている施策、とりわけ労働者派遣の拡大は、それに真っ向から反する愚策にほかならない。
 特に今回の法案要綱の場合、労働側が一致して強く求めてきた“均等待遇”には背が向けられ、“均衡処遇”の努力義務に止まっている(法案要綱「十四」。具体的には指針等)のだから、なおさら低賃金・使い捨ての労働者派遣への置き換えが促進されることにならざるを得ない。賃金破壊、経済破壊の改悪であることは明らかだ。

5.もう一つ指摘すべきことは、労働政策の決定原則にも悖る許されない改悪だということである。
 労働政策審議会の「建議(報告書、2014年1月29日)」には、労働者代表委員による「臨時的・一時的な働き方とする原則の実効性を担保し、派遣先の常用労働者との代替の防止を図るため、期間制限の在り方について、26業務を今日的な視点から絞り込んだ上で、引き続き業務単位による期間制限を維持すべき」という意見が附された。法案要綱の審議でも、「臨時的・一時的な働き方」であることの明確化を求める意見が強く出された。
 ここに端的に示されているように、今次報告書(建議)と法案要綱は、労働側の一致した強い反対や懸念を無視して強引にとりまとめられたものである。労働政策の政(公)労使三者構成による決定原則が蔑ろにされたのであって、重大な瑕疵を持つ改悪というしかない。この点でも法案要綱は撤回以外にない。

  2014年3月5日

全国労働組合総連合
事務局長  小 田 川 義 和


参考:建議時点の談話140129

需給制度部会の報告書取りまとめに強く抗議する

 労働政策審議会・労働力需給制度部会(部会長・鎌田耕一東洋大学教授)は本日、広範な労働組合や市民の反対を押しきって、「労働者派遣制度の改正について(報告書(案))」を取りまとめた。全労連は、報告書の内容と強引な取りまとめに強く抗議する。

 報告書は第一に、「派遣労働の利用を臨時的・一時的なものに限ることを原則とすることが適当」としながら、(1)派遣労働者が派遣元に無期雇用の場合には、期間制限をなくし、(2)派遣労働者が派遣元に有期雇用の場合も、派遣先企業が3年ごとに過半数組合等から「意見を聴取」しさえすれば、人を入れ替えていつまでも労働者派遣を使い続けることができる内容となっている。実際には期間制限はなきに等しいのであって、羊頭狗肉と批判されねばならない。
 第二に、労働者や市民の強い願いである「均等待遇」原則については、「均衡待遇の推進」に止め、「配慮する」など何ら具体的な担保のないものとなっている。
 また、登録型派遣・製造業務派遣についても、「経済活動や雇用に大きな影響が生じるおそれがある」として、禁止に背が向けられた。

 もし、報告書どおりの法「改正」が強行されれば、安価でいつでも切れる制度として、正規雇用の職場を奪い、労働者派遣への置き換えが急速にすすむことは明らかである。派遣労働者から正規雇用への道は一段と狭まり、雇用の不安定化に拍車がかかることが強く懸念される。
 安倍政権は春闘を前に賃上げをさかんに口にしているが、その言葉にも逆行し、働く人々の賃金水準をいっそう低下させて、内需縮小・景気後退の悪循環を招くものでもある。
 労働者派遣はそもそも、職安法第44条の例外として限定的に認められているに過ぎないのだから、労働者派遣を一般化・永続化する今回の報告書は、労働法制の根幹を揺るがず大改悪である。法制度上もとうてい認められない。

 今回の報告書は、「期間制限」の項で、「26業務を今日的な視点から絞り込んだ上で、引き続き業務単位による期間制限を維持すべき」という労働者代表委員からの意見が付記されたように、労働側の意見を封殺し、政府と公益委員が経済界の意向に沿って強引に取りまとめを急いだものとなっている。三者構成の原則からも、重大な瑕疵があると指摘する。

 全労連は、使い捨て労働を一般化する労働者派遣法大改悪の撤回を強く求め、広範な労働組合や市民との共同をさらに強め、大きな反撃をつくっていく決意である。
 「年越し派遣村」から5年が経過した。当時、派遣切りの嵐に対して「政治災害」だという批判が沸きあがったが、労働者派遣の不安定さは今も何ら変わっていない。真に専門的な業務に限定した期間制限を維持するとともに、間接雇用ゆえの労働者派遣の不安定さを是正する規制強化こそが本来、今求められていることである。

  2014年1月29日

全国労働組合総連合
事務局長  小 田 川 義 和

 
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