TOP 全労連紹介 ニュース オピニオン 労働法制 賃金闘争 憲法・平和 くらし・社会保障 非正規全国センター 全労連共済 青年 女性 English
 
BACK
TOP
オピニオン
 

2014年4月25日

内閣総理大臣 安 倍 晋 三 殿
(経済財政諮問会議・産業競争力会議 議長)
法務大臣 谷 垣 禎 一 殿
国土交通大臣 太 田 昭 宏 殿

全国労働組合総連合  議長 大 黒 作 治

外国人労働者の受け入れ拡大についての意見

 政府は最近、少子・高齢化の進行による労働力不足やオリンピック・パラリンピックの2020年東京開催等を理由に、外国人労働者の受け入れ拡大の動きを急速にすすめている。4月4日の第2回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議には、関係大臣等からも検討状況が示された。これら一連の動きからは、出生率の低下と労働力人口の減少の原因が歴代政権の失政にあるとの真摯な反省はうかがえない。外国人労働者による安価な労働力確保というご都合主義的な対応といわざるを得ない。
 よって、以下のとおり意見を提出し、日本の経済、社会の未来を切り拓くという観点からの総合的な見直し、検討を強く求める。

1.外国人技能実習制度による受け入れ拡大に反対する
 政府は、少子化による労働力不足の顕在化や2020年オリンピック・パラリンピック開催に伴う一時的な需要増大を理由に、外国人技能実習制度を拡充し、建設分野にくわえ、農林水産業や製造業、さらには介護や家事支援等での受け入れ拡大を検討しているが、このような安易で安価な労働力確保策は断じて認められない。
 今回取りあげられている分野はいずれも、低賃金と劣悪な労働条件で人手不足が深刻化している産業分野である。したがって、本来必要なことは、賃金をはじめとする就労環境を大幅に改善して若者が選択・定着する状況をつくりだすことである。そうした対策をなおざりにして安易に外国人労働者の受け入れを拡大しても解決策とはならない。言葉の壁による安全への懸念が指摘されるとともに、それらの産業分野の低賃金・劣悪な就労環境を固定化し、さらには賃金水準等の引き下げ要因となって事態をいっそう深刻化させることが強く懸念される。
 そもそも外国人技能実習制度とは、「わが国で開発された技能・技術・知識を開発途上国等へ移転する国際貢献のための制度」のはずである。しかし、現状では安価な労働力確保策という側面がより強まっており、政府も認めるように過重労働や賃金未払い等の労働事件、人権侵害が多発している。にもかかわらず、今回の政府方針は制度本来の趣旨を完全に逸脱した安価な労働力確保策となっており、国際的にもいっそうの強い批判にさらされることとならざるを得ない。したがって、外国人技能実習制度は拡充ではなく、もはや廃止すべきである。

2.外国人労働者の人権を保障した就労環境の整備を
 全労連は排外主義的に外国人労働者の受け入れに反対しているわけではない。むしろ、国際化にふさわしく外国人労働者の人権を十全に保障した就労環境の整備が必要だと考える。
 国際化と経済のグローバル化の進行のもとで、今後ますます国際的な人の移動・移住は増えていく。日本にも多様な外国人が移り住み、日本人もまた海外に勤務・移住する機会が必然的に増えていくこととなる。そうしたもとで必要なことは、人権が等しく保障され、社会保障などの諸制度が適用される環境を総合的に整備することである。移民労働者に関するILO第97号・第143号等の条約をまず批准したうえで、賃金ダンピングが起きることがないよう日本の最低賃金制度を抜本的に改善することなど、日本の賃金相場を下回る安価な労働力としての受け入れができない仕組みを、国民的な合意形成のもとで早急に構築していくべきである。

3.政府をあげて安心して子を産み育てられる環境を整備せよ
 政府は、少子・高齢化、人口減少社会の到来をあたかも“自然現象”のごとく語っているが、そこにこそ、根本的な問題がある。出生率がこれほどまでに低下し、すでに労働力不足が顕在化しつつあるのは、労働法制改悪による非正規雇用の拡大など雇用の不安定化・低賃金化と深刻な長時間過密労働、さらには社会保障・教育施策の改悪で、安心して子どもを産み育てることが困難な日本になってしまったからである。
 政府資料によっても、このまま推移すれば、2040年に3割の自治体が消滅する可能性が高く、100年後には日本の人口は4,300万人にまで減少するとされている。経済成長はおろか、日本社会の未来そのものを危うくする重大な事態である。産業競争力会議等では、だから構造改革のスピードをもっとあげるという議論がされているが、それでは事態をよりいっそう深刻化させるばかりであり、誤った政策といわざるを得ない。
 いま求められているのは、これまでの政策を180度転換し、政府をあげて安心して子どもを産み育てられる環境を整備し、出生率を抜本的に高める緊急対策を実施することである。労働法制の「規制緩和」を転換して安定した良質な雇用を実現し、賃金の底上げをはかること、労働時間の短縮をはじめ男女ともが家族的責任を果たせる雇用環境を実現すること、さらには未来を担う子どもは社会で育てるという理念を確立して保育や教育の無償化や公的保育の充実など子育て環境の改善など社会保障施策を大幅に拡充することが必要である。

以上

 
〒113-8462 東京都文京区湯島2−4−4全労連会館4F TEL(03)5842-5611 FAX(03)5842-5620 Email:webmaster@zenroren.gr.jp

Copyright(c)2006 zenroren. All rights reserved.