社会保険労務士法の「改正」問題が急浮上している。
5月13日の自民党厚労部会で同法「改正」案が協議・決定され、今国会での議員立法としての成立がめざされていると伝えられる。「改正」案の内容は、(1)民間型ADR(裁判外紛争解決手続)における特定社労士の代理権付与について、目的価額60万円以内という制限を120万円まで拡大すること、(2)地方裁判所以上の審級における出廷陳述権の付与、(3)社労士法人について一人社員でも認めることなどである。
社会保険労務士の業務範囲の拡大と理解するが、そのような法改正を性急におこなう必要があるのかと疑問を禁じ得ない。全労連は、社労士悪論とでもいうべき絶対反対論に立つものではないし、ワーク・ライフ・バランスの実現など働くルールの確立のために活動する社労士がいることも知っている。しかし、一方で、ブラック企業など悪徳経営者の側に立ち、または経営者を唆し、残業代不払いや労働条件の乱暴な改悪、不当労働行為に、社労士が介在している事例が多いことも事実である。
そうした事例が多い背景には、社労士の仕事がそもそも、企業側の依頼でおこなわれることが圧倒的だという事情があると考える。同時に、悪徳社労士に対する内部自治の弱さも指摘される。
こうした実情を踏まえれば、「ブラック企業の社会問題化を踏まえ、労働者が声をあげやすい環境を整備することがねらい」という説明に直ちにうなずくことはできない。制度設計について、国民的な議論が十分保障される必要がある。
しかし、今国会の残された会期はわずかである。また、議員立法として政党間のすり合わせで提出ということになれば、ほとんど審議なしでの採決強行ということになりかねない。
よって、全労連は、同「改正」法案の今国会への拙速な提出を見合わせ、国民的な議論を保障するよう求める。
2014年6月3日
全国労働組合総連合
事務局長 小 田 川 義 和