生きるために仕事した末に、死に追いやられる過労死。健康被害は今も増え続け、悲劇はなくなっていない。こうしたなか、過労死防止を国の責務と明記した初の法律「過労死等防止対策推進法案」が6月20日、参議院本会議で全会一致により可決され成立した。過労死遺族や弁護団などが長年にわたり世論と政治に働きかけてきた尽力のたまものである。全労連は、「過労死防止法」の取り組みや100万人署名に賛同・協力してきたものとして、法成立を歓迎するとともに、法制定を契機に過労死・過労自死のない職場と社会を一日も早く実現するため奮闘することを表明する。
法律では過労死を「業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や精神障害を原因とする死亡や自殺」と定義。国が実施する対策として、(1)過労死の実態の調査研究、(2)国民の関心と理解を深めるための啓発、(3)産業医への研修など相談体制の整備、(4)民間団体の活動支援―を列挙している。地方自治体や事業主にも協力を求め、「勤労感謝の日」を含む毎年11月を啓発月間としている。対策に当たっては国に大綱の作成を義務付け、過労死遺族や労使の代表をメンバーとして厚生労働省内に設ける「防止対策推進協議会」からの意見を参考にするとしている。また、調査研究結果や対策の実施状況を毎年国会へ提出するよう義務付け、施行後3年をめどに法律の内容を見直すこととしている。
過労死を法律で明確に定義し、防止策の実施を国の責務としたことの意義は大きく、評価できる。一方で過労死をなくすための事業主の責務が明記されなかったことは3年後の法改正にむけた検討課題と指摘したい。全労連は、国が法の趣旨に則り過労死まん延の原因である長時間・過密労働の規制、労働者を使い捨てる「ブラック企業」の根絶など法の実効性を高める諸施策を進めることを要求する。とりわけ安倍政権と財界がたくらむ「残業代ゼロ」「過労死促進」の労働時間制度の見直しは長時間労働や過重労働防止に逆行するものであり、直ちに断念すべきである。
過労死・過労自死のない社会、安全で健康に働ける職場をつくることは、国民誰しもの願いである。全労連はひきつづき国民の願い実現のため奮闘する。
2014年6月20日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和