1.29日夜、中央最低賃金審議会は2014年度の地域別最低賃金額の改定の目安として、Aランク19円、Bランク15円、Cランク14円、Dランク13円とする内容を厚生労働大臣に答申した。
Aランクは昨年と同額、BCDランクは昨年より2〜4円上積みしたが、加重平均では昨年実績を1円上回る水準にとどめた。
仮に目安どおりの改定が地方で行われたなら、最低額は677円、最高額は888円となるが、この賃金では、フルタイム働いても生活保護基準以下の収入にしかならない。「雇用戦略対話合意」によって、速やかに到達すべきとされた800円をクリアした地方はわずか1増の4都府県、700円台は26道府県、600円台は17県も残り、目標にはほど遠い。さらに、この目安では、地域間の賃金の最大格差は現行の205円から211円へと拡大してしまう。長時間に及ぶ審議を重ねられた委員の労は多としつつも、低額かつ格差拡大のこの目安には、納得することはできない。
2.安倍政権は、今年の目安審議に対しても、「中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援を図りつつ最低賃金の引上げに努める」との成長戦略に配意した調査審議を求めた。昨年に比べ企業業績は好転、有効求人倍率をはじめとする雇用情勢も改善傾向にあり、さらに物価も3%台に上昇している。一方、地方からは、賃金の地域間格差の是正を求める声がかつてないほど強まっている。賃金格差が生み出す人口流出によって「消滅」するとまで言われはじめた地方・地域の危機感は切実である。
情勢をふまえるならば、今年こそは「格差是正・大幅引き上げ」へと舵を切り、1000円を目指すとした雇用戦略対話合意に大きく近づく抜本的な改定の目安が出されるべきではなかったか。
3.ところが、田村厚生労働大臣は7月15日の記者会見で、「昨年並み、若しくはそれよりもいい成果が出ればありがたい」と発言し、昨年並み(15円)の低い相場を設定した。使用者側委員は、昨年並みの改定すら拒否し、小規模企業の賃金改定率1.1%(8円相当)を目安とすべきと主張、とりわけCDランクの底上げの流れをおしとどめた。中小企業・小規模企業が、アベノミクスのインフレ政策による原材料価格の高騰や取引先の海外移転、消費税増税の価格転嫁、低単価の押しつけに苦しんでいる事情は承知する。しかし、それらの解決は最低賃金の抑制ではなく、同じく使用者側の席にならぶ日本経団連に集う多国籍化した大企業と安倍政権に対し、改善要求をつきつけるべきものである。
使用者側委員にも、憲法の要請である「健康で文化的な最低限度の生活」、労働基準法の要請である「人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき」賃金水準を達成することを目標とした、あるべき労働基準としての最低賃金を設計するという立場で審議に臨むことを求めたい。
4.目安答申を受け、各都道府県の最低賃金審議会が調査審議を本格的にスタートさせる。各地方の審議会には、大資本の利益のために地域の低賃金構造の温存をもくろむ財界・多国籍企業の要求をはねのけ、中賃目安を大きく乗り越える改定を決断することを強く求める。とりわけ、格差是正のためにCDランク県での大幅な引き上げを要請する。
全労連は、最低賃金1000円以上・全国一律最賃制度の実現に向け、金額改定の最終場面まで、旺盛な運動に取り組むよう、全国の仲間に呼びかけ、多くの未組織労働者に全労連運動への参加を訴える。
2014年7月30日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久