厚生労働省が労働政策審議会に諮問していた「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案要綱」について、労政審雇用均等分科会は10月7日、法案要綱をおおむね妥当と答申した。
安倍政権は、6月に閣議決定した「日本再興戦略」改訂2014(改訂戦略)で、少子高齢化社会を前に女性や高齢者を労働力市場に参入させ、労働力人口を維持することが日本の成長の鍵であるとして、「女性の更なる活躍の促進」を打ち出した。10月3日には総理を本部長に「すべての女性が輝く社会づくり本部」を設置し、「すべての女性が輝く政策パッケージ」を決定するとして、答申された女性の活躍推進法案(仮称)を今国会に提出し、成立させたいとしている。
法律案要綱は、9月30日に建議された雇用均等分科会の報告「女性の活躍の推進に向けた新たな法的枠組みの構築について」から若干踏み込み、301人以上の企業に女性の管理職登用などの数値目標を定めることを義務付けている。しかし、実効性の薄い不十分な内容といわざるを得ない。
雇用の場で、女性の地位が低くおかれている日本において、女性の登用・活躍を推進する「新法」が議論されることの意義は大きく、女性の人権が認められ、真に女性が輝き、仕事と生活を両立させて働き続けることができる法律として整備されることが望まれた。雇用均等分科会の論議でも、採用、配置、雇用管理区分、教育訓練で女性が差別され、多くの女性が非正規雇用や一般職など差別的な雇用管理区分・雇用形態におかれ、賃金も低いこと、男女とも長時間過密労働が強いられ、仕事と家庭の両立が困難で、女性の離職に歯止めがかからず、その困難さゆえに女性が昇進を望まない実態が議論された。また、国連女性差別撤廃委員会から間接差別の是正や、女性を雇用の場から排除する長時間労働の是正、固定的性別役割分担意識の払拭、妊娠・出産に伴う不十分な保護や制度について厳しく指摘されていることも、均等分科会で意見が出された。
しかし、こうした女性の現状を打開していくための議論が深められたとはいえない。議論が開始されわずか2か月余りで法案化されたことはあまりに拙速である。ひろく女性や国民の意見を聞く機会も設けられずに、法案が国会に上程されることも大きな問題である。
一方、今国会には労働者派遣法の改悪法案も上程され、労政審労働条件分科会では労働時間法制の大規模な規制緩和が議論されている。成長戦略では「労働移動型」への政策転換が推進され、「改訂戦略」でも「多様な正社員制度の普及・拡大」、「時間ではなく成果で評価される新たな労働時間制度の創設」、「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」などが並んでいる。こうした施策が推進されれば、女性労働者が今以上に、非正規雇用に流されていくことは明らかである。
全労連は、女性の活躍推進法案(仮称)が真に女性の人権を保障し、女性が真に輝くための実効ある法律となることを目指して取り組みをすすめる。あわせて、「成長戦略」で示された労働法制の規制緩和に強く反対し、間接差別の禁止や長時間労働の上限規制、均等待遇の実現などによって、女性が真に活躍できる土台を整える労働法制の改善を求めて運動を強める。
2014年10月8日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久