昨日投開票された第47回衆議院議員選挙で、自民党は追加公認を含め291議席、公明党を含む与党で326議席と、引き続き3分の2の議席を維持した。しかし、これをもって安倍政権の政策が信任を受けたとは到底いえない。自民党の比例得票数は1,765万票であり、前回2012年より約100万票増やし得票率は33.1%となったが、絶対得票率は17.4%であり、6人に1人の支持に過ぎない。各種世論調査でも、消費税増税や集団的自衛権、原発再稼働など個別課題では反対が6〜7割に達している。看板政策のアベノミクスについても、最近は成功していないという意見が多数を占めるようになってきている。
にもかかわらず、与党が3分の2の議席を維持したのは、突然の総選挙で、しかも、消費税率10%の1年半先送りという争点のわかりにくさにくわえて、小選挙区制の弊害を強く指摘せねばならない。実際、自民党は小選挙区で今回、48%の得票率で76%の議席を獲得している。また、政権選択選挙というマスコミ報道もあいまって、多くの有権者、とくに若者や無党派層が投票に躊躇したためでもある。投票率は52.7%に止まり、前回からさらに6.7ポイントも低下して、戦後最低を更新した。日本の民主主義という観点からも由々しき事態である。
自民党との対抗軸を打ち出せなかった“第3極”といわれる勢力が後退しブームが過ぎ去ったこと、自共対決を掲げた共産党が政権批判の一定の受け皿となって議席を大きく伸ばし2.6倍化したこと、オール沖縄の候補が全員勝利し沖縄の小選挙区で自民党の議席がなくなったことなどは、部分的ではあるが、今後にいきる貴重な教訓である。つまり、今回の総選挙で問われたのは、安倍「暴走」政治に対抗する姿勢にほかならない。なかば自民党の補完勢力となった第3極の離合集散などの混乱や共産党の躍進をわけた分水嶺もそこにある。また、安倍「暴走」政治への批判がひろがっているもとで、沖縄の選挙結果からは、一点共闘をさらに発展させ、切実な要求と地域に強く根ざせば地殻変動的な変化が起こり得ることが読み取れる。
全労連は、消費税率引き上げの中止・撤回、集団的自衛権の閣議決定など戦争する国づくり反対、残業代ゼロなど雇用破壊の中止と賃上げ・雇用の安定、社会保障や中小企業・農業支援の拡充、震災復興と原発再稼働反対などの切実な要求を掲げ、「選挙に行って安倍暴走政治にノーの審判を」を合言葉に、要求選挙を展開してきた。その経験からも労働者・国民の切実な願いが安倍政権を追い詰めており、激しいせめぎあいとなっているが実感される。
しかし、総選挙で安倍政権が3分の2の議席を確保したもとで、戦争する国づくりや原発再稼働、働く人々や庶民、地域社会を犠牲にした世界で一番グローバル大企業が活動しやすい国づくりなど、「暴走」政治が今後いっそう乱暴に加速されることが懸念される。また、自民党の総選挙公約に明記されたように9条など明文改憲の策動が強まることも確実である。暮らしと日本社会の未来が脅かされる重大な事態である。全労連は切実な要求を基礎に各分野で国民的な共同をさらに徹底して強化していく決意である。そうした活動を通して、平和を基礎に雇用の安定と社会保障拡充を中心とした社会への転換の合意づくりを強める。総選挙結果からも、住民生活と地域経済の守り手としての地方自治体の役割が増している。賃金底上げによる内需活性化などとともに、来春のいっせい地方選挙を契機にしつつ、住民本位の地方自治確立のために力を尽くしていく。
2014年12月15日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久