政府の規制改革会議(議長:岡素之・住友商事株式会社相談役)は3月25日、「『労使双方が納得する雇用終了の在り方』に関する意見」を取りまとめた。
その内容は、解雇の多発など雇用のいっそうの不安定化をまねくものにほかならず、断じて容認できない。撤回を強く求める。
意見書は、「解決までの期間や解決金がまちまちで、紛争解決の予測可能性が低いことが、労使双方の雇用終了への対応に歪みをもたらしている」としている。しかし、実際には、経営者の一方的な都合での解雇が横行し、多くの労働者が人権を侵害され、泣き寝入りをしているのである。政治がやるべきことは「整理解雇四要件」を法定化することなど、経営者の理不尽な解雇を規制する実効ある法的措置であり、断じて解雇規制の緩和などではない。
紛争解決手段の拡充というのなら、訴訟援助制度を充実させるなど、非正規雇用や低賃金の労働者が不当な解雇を争えるようにこそすべきである。
意見書はまた、「当事者の予測可能性を高め、紛争の早期解決を図ることが必要である。このため、解雇無効時において、現在の雇用関係継続以外の権利行使方法として、金銭解決の選択肢を労働者に明示的に付与し(解決金制度の導入)、選択肢の多様化を図ることを検討すべき」としている。しかし、「解雇無効」なら、就労請求権を認め、職場復帰が可能となるようにすべきである。
現状においても、経営側の理不尽な対応で解雇無効の場合も職場復帰がかなわず、金銭解決となる例が多いのであるから、「解雇無効時の金銭解決」を制度化すれば、金さえ払えば首切り放題という「解雇自由社会」になってしまうことは明らかである。
今回の意見書の取りまとめを受け、政府(厚生労働省)として対応を検討するとされているが、言語道断といわねばならない。
解雇規制という労働者保護の根幹に関わることが、労働側の代表が一人もいないなかで方向づけられることは、ILO等も求める三者構成原則の逸脱にほかならない。しかも、金銭解決制度の問題は、安倍政権の発足直後から規制改革会議や産業競争力会議等で俎上にのぼり、世論でも問題視されるなかで、一昨年と昨年の6月の閣議決定等からは見送られたという経緯を持つものである。それを何度も蒸し返し、官邸の威光として判例法理を覆す検討を担当省庁に押し付けるやり方は、法的にも許されるものではない。
全労連は、規制改革会議の意見書に厳しく抗議し、解雇規制の緩和を許さないために徹底してたたかう決意である。
2015年3月27日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久