衆院厚生労働委員会は4月24日、「持続可能な医療保険制度等を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」(医療保険制度改革関連法案)の採決を強行した。人々のいのちと安全に重大な影響を持つ保険制度の大幅な見直し(改悪)法案にもかかわらず、参考人質疑を含めてもわずか22時間という極めて短時間で採決が強行されたことはとうてい容認できない。全労連は厳しく抗議し、参院段階では徹底審議のうえで廃案にするよう強く求める。
同法案の第一の問題点は、後期高齢者医療の保険料軽減特例の廃止や大病院の紹介状なし受診の定額負担義務化、入院給食の値上げなどにくわえ、国保料のさらなる引き上げなど、患者・国民にいっそうの負担増を強いる内容となっていることである。今でさえ経済的理由からの保険料滞納や受診中断が大問題となっているなかで、いのちの沙汰も金次第という状況をより深刻化させるものである。消費税率引き上げの一方での大幅な負担増であり、二重三重に許されない。
第二の問題点は、被保険者・国民にはまともな説明もなく、より根本的な医療保険制度改悪・医療費抑制の恒久的な仕組みづくりにほかならないことである。国保の都道府県単位化を軸とした保険制度の改悪によって、国の責任は事実上棚上げされ、地方自治体と住民にいのち(と保険財政)の責任が押しつけられることになる。昨年成立した医療介護総合法にもとづく計画づくりとセットで、都道府県は医療・介護の抑制を競い合わされることになる。いのちをまもる保険制度から医療・介護改悪のための保険制度への大転換にほかならない。
第三の問題点は、患者申し出療養制度の創設など、皆保険制度に大穴が明けられようとしていることである。安全・有効性が不確かな保険外診療(自己負担)が大きく拡大されることにくわえ、上記の医療・介護抑制の仕組みづくりとも相まって、保険範囲を縮小させ、営利企業の新たな利潤追求の場に医療・介護を変質させるものである。
以上のとおり、今回の医療保険制度改悪法案は、医療・介護の大幅な後退をまねき、国民皆保険制度を解体に向かわせるものにほかならない。しかも、これほどの問題を持つ法案が極めて短時間で委員会採決に至ったことは議会制民主主義の点からも許されるものではない。安倍政権の強権的手法のもとで国会を悪法成立マシーンとさせないとりくみ強化が求められている。
全労連は世論と共同をいっそう強化して、国民皆保険制度の根幹を揺るがす医療保険制度改悪法案の廃案を求めていっそう運動を強化する。切実な医療・介護要求の実現を求める職場・地域からのとりくみを推進し、社会保障拡充への政策転換を求める共同を前進させる。
2015年4月27日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久