本日、日本は戦後70年の終戦記念日を迎えた。全労連はあらためて、日本軍国主義による侵略戦争と植民地支配の犠牲となられた方々に深い哀悼の意を捧げるとともに、戦争への痛苦の反省のうえに打ち建てられた憲法の平和主義と9条を守り抜く決意を表明する。
昨日出された安倍首相の談話には、「侵略」や「植民地支配」「反省」「お詫び」などの言葉が入りはした。しかしながら、「反省」や「お詫び」は過去の歴代政権が表明してきたという指摘に止まっており、日本が「侵略」や「植民地支配」をおこなったことや従軍慰安婦問題などの歴史的事実の明確な指摘と、それに対する「反省」や「お詫び」とはなっていない。
国内外の批判の高まりで、構想・原案段階にはなかったといわれる、それらの言葉を一応盛り込みはしたものの、心そこにあらずの不誠実な態度といわざるを得ない。これでは「過去の歴史に真正面から向き合」う姿勢ということはできず、アジアや世界の人々の懸念を払しょくし、相互理解と平和・友好を前進させるにふさわしい談話とはいえない。
安倍談話は、「いかなる紛争も、法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである。この原則を、これからも堅く守り、世界の国々にも働きかけてまいります」とする一方で、結論としては「『積極的平和主義』の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります」という矛盾した宣言をおこなった。ここにいう「積極的平和主義」とは、現代平和学の開拓者とされるヨハン・ガルトゥング氏が提唱した「積極的平和」(戦争のない状態=「消極的平和」にくわえ、貧困、抑圧、差別などの構造的暴力がない状態)とは似ても似つかない言葉の流用にほかならない。その実態は力(軍事力)を基調に日米同盟においてより主体的に行動しようということであり、その具現化が戦争法案(安全保障関連法案)である。
安倍首相が“戦後70年”の談話において、憲法違反が明白な力による政策推進を宣言したことを厳しく批判し、国民的な世論と運動をさらに強め、戦争法案を必ず廃案に追いこむために、全労連は組織の総力をあげてたたかう。
安倍首相は「戦争を未然に防ぐもの」と説明するが、それは過去の大戦の教訓とも、また近年、アメリカが起こしたアフガニスタンやイラク等への侵略・干渉が泥沼の内戦とテロをうみだしていることにも反している。憲法の平和主義にこそ、世界と日本の平和な未来があることは明らかであるし、世界の多くの人々もそれを求めている。全労連は、戦争も核兵器もない平和な世界と日本をめざして、国内外の広範な人々との連帯をさらに強化していく。
2015年8月15日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久