厚労省雇用均等分科会は本日、「仕事と家庭の両立支援対策の充実について」を建議した。
建議の内容は、(1)現行の通算93日間を変えずに、介護休業を3回分割取得できるようにすること、(2)介護休業・休暇・労働時間制限などについて祖父母・孫などの同居・扶養要件を外すこと、(3)「常時介護を必要とする状態」の判断基準を緩和すること、(4)介護休暇の半日単位取得を可とすること、(5)介護のための所定労働時間短縮措置を介護休業と通算せず、3年以上の期間とすること、(6)所定外労働の免除を介護終了期間までとし、法律に明記すること、(7)子の看護休暇の半日単位取得を可とすること、(8)有期契約労働者について、育児休業取得要件を1年以上の雇用契約を経て子が1歳6か月に達するまでの間に契約更新がないこと、介護休業については93日を超え6か月までの間に契約修了しないことがそれぞれ明らかでないこととすること、(9)マタハラ対策について、セクハラ防止のための措置を参考に整備することなど、育児介護休業の改正に関するものである。
示された改正内容は、一定の前進面を持つものとして評価するが、妊娠・出産・育児や家族介護を理由に離職を余儀なくされることなく、働き続けることのできる社会を構築することによって、労働力の確保・定着をはかり、社会・経済の発展に貢献していくという改正趣旨からすれば、はなはだ不十分なものといわざるを得ない。
例えば、介護休業については、介護保険制度との連動を理由に93日の期間が維持されたが、介護サービスの現状や特養等の不足からすれば、とても十分な期間ではない。また、非正規雇用労働者が大幅に増え、正規雇用労働者も人手不足が極限となっている現状では、権利行使ができない、若しくはためらわれる職場が少なくなく、それがハラスメントの大きな要因ともなっている。正規雇用を中心とした人員増を基本にすべきだが、建議では代替要員の配置の義務化も見送られている。有期契約労働者の取得要件の緩和も、多くの有期契約労働者が数か月単位の契約を繰り返して長年働いている現状のもとでは、期間の制限を設けることは育休切りを是認することになりかねない。しかも、「育休取得を理由とせず、経営上の理由から契約を更新しないことは不利益取り扱いには該当しない」との文言まで盛られており、従前の解釈通達からも後退している。
男女雇用機会均等法や育児介護休業法は改正を重ねてきたが、第1子妊娠・出産を契機とする女性労働者の離職は改善していない。女性労働者の6割近くを占める非正規雇用労働者の育児休業取得率は極めて低水準に止まっており、介護離職も年10万人を超えている。安倍政権が「1億総活躍社会」を打ち出し、出生率1.8%や介護離職ゼロなどを打ち出したからには、それにふさわしい建議がなされてしかるべきではなかったのか。
全労連は、育児介護休業法の改正において、実態を踏まえた実効ある改正を引き続き求めるものである。それとともに仕事と生活の両立支援のための基盤整備としての社会保障制度の拡充、派遣労働者や有期契約労働者の雇用安定の措置の抜本的な拡充、仕事と生活の両立を保障する労働時間の上限規制の実現など労働時間の短縮措置を強く求めていく。また、それに逆行する、残業代ゼロ制度など労働時間規制を壊す労働基準法改悪法案の廃案を求めてたたかいをさらに強化する。
2015年12月21日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久