12月25日、第4次男女共同参画基本計画(第4次計画)が閣議決定された。第4次計画はまず、「社会全体で女性の活躍の動きが拡大し、日本は大きく変わり始めている」としているが、現実を見ないものとして批判されねばならない。
国連女性差別撤廃条約の批准、男女雇用機会均等法の制定から30年が経過したが、日本における男女の不平等は遅々として改善されていない。女性が第1子の出産を契機に離職する割合が6割近い状況は改まっておらず、女性労働者に占める非正規雇用割合は今や6割近くになっている。女性の賃金は男性の約半分に過ぎず、2015年11月に発表された世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数(GGI)は145か国中101位となり、男女賃金格差は一昨年より拡大している。
意思決定の場への女性の参画「30%目標」が達成できなかったことへの反省もなく、改めて設定した数値目標は30%目標達成を断念する内容に後退している。厳しく批判されねばならない。
世界が50%に向けて動き出しているもとで、求められていたのは30%目標を堅持し、女性の参画が進まない要因を真摯に分析し、その改善のための具体策を盛りこむことではなかったのか。
その点でとくに指摘すべきは、雇用分野の計画の柱が企業や男性への意識啓発に留まり、法的な規制の強化に極めて及び腰だということである。法規制に触れているのは、時間外労働の割増賃金率適用猶予の廃止、年休取得促進など、すでに国会に提出されている残業代ゼロ法案(労働基準法改革法案)に部分的に盛られたものなど実効性が薄いものばかりである。
安倍政権は財界の求めるままに労働時間規制を緩和し、非正規雇用を拡大して、男女雇用機会均等法やパート労働法の抜本改正をなおざりにしてきたが、「女性の活躍」というのなら、労働時間の上限規制など、男女ともが人間らしく働けるルールの確立こが求められている。また、女性の半数以上が非正規雇用となっている現状を改善しなければ、権利を行使することは難しい。
そうした背景として、第4次計画が、女性の活躍の必要性をもっぱら経済成長、人口減少の観点から取りあげ、女性の人権を確立する平等施策という視点が希薄なことが指摘されねばならない。また、貧困に苦しむ女性が自立してその生計を営める施策を拡充することが、すべての女性の地位向上につながるものとなる。
全労連女性部の調査では、仕事と生活の両立支援制度が「人手不足により、使えない」との声が多数となっている。第4次計画では、行政分野において女性の採用・登用、職場環境の拡充施策を講じるとされているが、現在の総人件費抑制施策をやめ、定員を増やすことなしに、公務職場での女性の活躍は困難である。政府が自らできる施策として定員増にとりくむべきである。
全労連は、女性が真に輝く施策を求めて、労働時間規制の強化、非正規労働者の均等待遇、男女雇用機会均等法の抜本改善、また、男女ともの人権が保障され、自立して人間らしく暮らせる最低賃金の大幅引き上げ・最低保障年金制度の確立を求めて、引き続き運動を強めていく。
2016年1月5日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久