甘利明経済再生担当大臣が昨日、辞任した。昨夕の記者会見で甘利氏は、国政に追われていたことを理由に、「事務所を統括する人間が道を外れてしまったことを報道されるまで見逃してしまった」と述べ、国会運営に支障を来さないよう、「国会議員としての秘書の監督責任、閣僚としての責務、および政治家としての矜持に鑑み」、閣僚の職を辞すると表明した。
まるで被害者であるかのような言い分だが、とうてい納得できるものではない。
甘利氏は自らの違法性は強く否定したが、自ら現金(50万円×2。しかも、1回は大臣室で)を受け取ったことや産廃問題の説明自体は聞いたこと、公設秘書が500万円を受け取り、うち300万円は秘書が私的に費消したこと、公設秘書らが建設会社側から接待を頻回に受けていたこと、秘書らがUR(都市再生機構)と12回面談していたこと(口利きは否定)などは認めた。むしろ、政治資金規正法やあっせん利得処罰法に違反しているのではないかという疑惑は深まったといわざるを得ない。閣僚の辞任では済まされない。
いずれにしても、建設会社側担当者の言い分とは大きく食い違うのであって、関係者を国会に喚問して真相を徹底解明すべきである。
また、安倍首相は辞任申し出の直前まで続投させる意向を示していたが、その感覚も疑われる。任命責任が厳しく問われねばならない。
またもや政治とカネの疑惑が浮上したことに、多くの人々が憤りを新たにしている。
こうした醜聞が後を絶たない背景には、企業団体献金と政党助成金の問題があることは明らかである。昨日の甘利氏の会見内容が事実であったとしても、こともあろうに大臣室で金銭や贈り物を日常的に受け取っていたということであり、感覚がマヒしているとしか言いようがない。
「身を切る改革」という言葉が政治家の口からもよく聞かれるが、身を切るとは、民意を反映する国会議員定数の削減や社会保障など暮らし関連の予算削減ではないはずである。本当に身を切るとは、企業団体献金を禁止し、政治がカネで歪められる根を絶つことであり、政党助成金を廃止し、政党と政治家が主権者国民の支持、民意に立脚してすすむ道に立ち戻ることである。その実現を強く求める。
2016年1月29日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久