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【談話】安倍政権の新たな経済対策について

 安倍政権は昨日2日、「未来への投資を実現する経済対策」を閣議決定した。「財政措置」などの誤魔化しで水増しした結果、事業規模は28.1兆円に膨らんだ。“真水”といわれる国と地方の歳出は7.5兆円であり、それも複数年での編成である。こうまでして事業規模を大きくしなければないこと自体、日本経済の深刻な行き詰まりを示すものといわなければならない。

 具体的な内容も、「21世紀型のインフラ整備」として、リニア中央新幹線の最大8年前倒し整備をはじめ整備新幹線や高速道路の整備、大型クルーズ船受入れのための港湾整備、首都圏空港の処理能力拡大など、従来型の大型公共事業が目白押しであり、国民に大きな将来負担を強いるものとなっている。また、「安全・安心の確保」の名目で、自衛隊の警戒監視態制の強化や迅速な展開・対処能力の向上、弾道ミサイル攻撃への対応なども盛られており、とうてい容認できない。

 「一億総活躍社会の実現の加速」として、低所得者に対する1.5万円の給付金支給(19年10月の消費税10%増税時の軽減税率導入までの間の「簡素な給付措置」)や公的年金受給資格を得る必要期間の25年から10年への短縮などが盛られ、給付型奨学金については「予算編成過程を通じて制度内容について結論を得、実現する」という表現に止まった。また、「働き方改革の推進」が成長と分配の好循環を強化する「最大のチャレンジ」とされているが、同一労働同一賃金の実現や長時間労働の是正などは、曖昧な表現に後退している。本気で総活躍というのなら、「多様な働き方」ではなく、働き続けられる賃金・労働条件の底上げこそ必要だということを強く指摘する。
 また、インフラなどの海外展開支援や中小企業等の経営力強化、農林水産業の輸出促進・競争力強化などが盛られているが、輸出・海外頼みや中小企業の事業転換(再編・淘汰)ではなく、地域経済の安定・底上げこそ、日本経済の回復のためには必要である。なお、雇用保険料の再引き下げも盛られたが、やるべきは改悪され続けてきた給付額や給付期間の充実であり、そうしてこそ質の悪い仕事に飛びつかざるを得ない状況をなくし、雇用の安定を確保することができる。

 最低賃金については、先般の目安答申が全国加重平均24円となったことを「非常に高い水準となった」と手放しで持ち上げているが、この水準では人間らしいまともな生活はできないし、経済への波及効果も限定的である。今回の経済対策も冒頭で、「少子高齢化や潜在成長力の低迷といった構造要因も背景に……個人消費や民間投資は力強さを欠いた状況にある」としているが、日本経済の持続的回復のために必要なのは、すべての働く人々の賃金の底上げであり、そのための中小企業支援の抜本的な拡充である。参議院選挙でもほとんどの政党が最賃1,000円を掲げたが、「今すぐ最賃1,000円以上」の政治決断、さらに全国一律最賃制の実現が強く求められる。
 全労連は、アベノミクスの転換を求めて、賃金の底上げをはじめ、持続可能な地域循環型の経済・社会を求めるとりくみと共同を、地域を基礎にさらに発展させていく。

 2016年8月3日

全国労働組合総連合
事務局長  井上 久

 
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