人事院は本日、2016年度の国家公務員給与に関する勧告と、職員の両立支援にかかる勤務時間の改定に関する勧告、意見の申出、および関連する報告をおこなった。
それによると、民間給与との比較で、月例給で0.17%(平均708円)、一時金で0.10月下回っているとして、3年連続となる俸給表の水準と一時金の引き上げが勧告された。初任給を1,500円引き上げ、若年層を同程度改善し、高齢層も含めてすべての俸給号俸を引き上げた。一方でまた、配偶者手当を半減する「扶養手当の見直し」も勧告された。
3年連続の引き上げであり、公務と民間労組が一体となってねばり強くたたかったことの一定の反映ということができる。しかし、同時に、アベノミクスのもとで貧困と格差が加速度的に拡大して人々の暮らしが悪化し、実質賃金の引き上げが強く求められていたことからすれば、不十分な引き上げといわざるを得ない。また、2014年勧告の「給与制度の総合的見直し」によって平均2%、高齢層では最大4%もの賃金削減がされ、経過措置として支給額が据え置かれているもとでは、実際には多くの公務労働者は引き上げにならない。
一方で、強行された「扶養手当の見直し」については、重大な労働条件の不利益変更であるにもかかわらず、労働組合とのまともな協議はなく、民間における支給実態や公務労働者の実態を無視して、配偶者手当の切り下げが勧告されており、人事院の使命にも反するものとして厳しく批判されねばならない。
また、本府省調整手当を引き上げ、「給与制度見直しを円滑に進める」としたことは、昨年勧告の地域手当における「地域間格差の拡大」につづいて、地方との格差をさらにひろげるものであり、認めることはできない。賃金の地域間格差は、若年労働者が地方からの流出し、地域経済が衰退する要因ともなっており、格差の是正こそが民間労働者や地域の事業者、自治体の切実な声である。同時に、公務員給与における職務給の原則をゆがめ、人事異動に弊害を引き起こすものとして批判されねばならない。人事院は、労働基本権制約の代償機関である。そうであるなら、公務労働者の切実な要求に正面から向きあい、職員からの信頼を取り戻す本来の役割発揮をめざすべきである。
全労連はあらためて、「給与制度の総合的見直し」と配偶者手当の改悪の中止を強く求める。また、非常勤職員の処遇を早急に改善するとともに、定年延長、再任用・再雇用問題を検討するにあたっては、その社会的な影響の大きさもふまえ、ひろく利害関係のある労働組合の意見を聞き、慎重な検討をおこなうよう求める。憲法とILO勧告にもとづいて、公務労働者の労働基本権を早急に回復するよう強く要請する。
2016年8月8日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久