政府・与党は本日、TPP(環太平洋連携協定)承認案等の衆院TPP特別委員会での採決を強行した。しかも、温暖化対策のパリ協定承認案の本会議採決に優先しての強行である。断じて許すことはできない。全労連は、この強行採決に対して厳しく抗議する。
TPP承認案の今臨時国会における審議では、政府訳に18か所もの誤訳があることが判明したことにはじまり、輸入米のSBS(売買同時入札制度)制度の悪用疑惑、野党の資料請求も政府・与党は「交渉過程は開示しない」と拒みつづけたこと、さらには政府や与党のなかからは早い段階から何度も強行採決発言が飛び出し、特別委員長の職権での強引な委員会開催が度重なったことなど、異常な雰囲気のなかで進行したのであり、「審議が深まった」とはとてもいえない。極めつけは、山本農水大臣の度重なる暴言であり、このような状況下で採決が許されるはずはない。山本大臣は即刻辞任し、審議をやり直すべきである。
極めて不十分な審議ではあったが、TPP協定の問題点が改めて浮き彫りになった。すなわち、政府の影響試算は極めて意図的なもので、国内経済に重大な負の影響を与えるものであること、農林漁業をはじめ、国民生活のさまざまな分野に重大な影響を与え、人々の暮らしと地域経済を冷え込ませるものであること、ISDS条項の存在をはじめ、日本の経済主権が侵され、グローバル大企業の利益に従属させるものであることなどである。
国際的にも、さまざまな問題が明らかになるなかで、アメリカでは主要大統領候補の2人ともが反対を明確にしており、他の締結国でも国会承認等の手続きはすすんでいない。日本だけが早期批准する必要などないのである。
全労連は、諸団体と力をあわせ、今臨時国会での採決を阻止するために、引き続き、全力を挙げてたたかう決意である。アベノミクスの誤りが明らかになり、各分野で矛盾や亀裂が深まっているもとで、日本経済の再生のためにも、安倍首相のいう「世界で一番企業が活動しやすい国」ではなく、賃金の底上げや良質な雇用、社会保障・教育の拡充、中小企業や農林漁業に対する支援の強化、地場産業の振興など、持続可能な地域循環型の経済・社会への転換を訴え、世論と共同をいっそう強化していく。
2016年11月4日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久