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【談話】劣悪な労働条件のもとで働く外国人技能実習生の安易な受け入れ拡大に抗議する

 11月18日、参議院は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」を可決、成立させた。実習生の受け入れ職種にあらたに介護を加え、受け入れ期間の上限を3年から5年に延長する内容である。この制度の目的は、開発途上国の経済発展を担う人材への技能移転であり、政府は日本の国際貢献の一翼を担う政策と説明している。しかし、実際には人手不足の小規模事業者に、使用者を選べず、転職の自由のない労働力を調達する仕組みとして機能している。本来の趣旨を逸脱したまま、今でも20万人いる実習生について、人権を守るための実効性ある法整備もはからず、安易に受け入れを拡大する政策に、全労連は反対である。  

 国会の法案審議の中では、監理団体が自ら行うべき業務を労働者派遣事業を営むブローカーに丸投げ委託したり、ブローカーから役員を受け入れて事業運営を行い、実習実施事業者から多額のマージンを取っていることや、そのコストが実習生の低賃金・長時間労働や不当に高い家賃等の請求によってまかなわれていることが明らかにされた。この事態に対し、政府も「丸投げ委託は認められない」と答弁したが、「不正は指導する」と繰り返すばかりで、業務委託禁止などの法的規制は明記されなかった。政府は「実習生の保護」をはかる新たな施策として、監理団体の事業許可や実習実施者の計画認定、改善指導等を行う「外国人技能実習機構」の創設をうたっているが、その体制は不十分であり、とても1,900の監理団体と25,000の実習実施機関に、昨年度でも10万人弱の実習生が新規入国している現状に、対応できるものとはいえない。
 若い実習生たちが毎年30名前後も死亡している過酷な労働条件・生活環境の改善について、参議院の付帯決議は「過労死が疑われる死亡事案が発生した場合」の支援等を国に求めた。違法横行の現状に対し、付帯決議の趣旨もふまえ、政府は、歯止めとなる規定を政省令に盛り込み、新設される機構と労働行政、入国管理行政のチェックと指導監督を強化する必要がある。
 ただし、実習生が申告権を行使するのは至難であり、労働組合のサポートが欠かせない。全労連加盟の各地方労連では、これまでも多くの実習生の相談にこたえ、労働基準監督署や入国管理局と協力し、場合によっては裁判も行って労働者の権利救済に取り組んできた。新法のもとで実習生はさらに増える。関係当局の真摯な対応を求めるとともに、全労連としても各地方労連と連携し、外国人労働者の権利確保に尽力する決意である。

 2016年11月21日

全国労働組合総連合
事務局長  井上 久

 
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