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【談話】労働者保護を後退させる労働者代表外しは許されない

厚労省「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議報告書」について

 厚生労働省の「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」は12月14日、第5回会議をおこない、報告書を取りまとめた。報告書は、働き方やそれに伴う課題が多様化しているとして、「旧来の労使の枠組みに当てはまらないような課題や就業構造に関する課題などの基本的課題については、必ずしも公労使同数の三者構成にとらわれない体制で議論を行った方がよい」として、新たに本審(労働政策審議会)のもとに、「三者構成ではなく有識者委員により構成する」「労働政策基本部会」(仮称)を設置するとともに、事案によっては「基本部会」にすらかけずに労働政策を決めていくことを可能とするよう求める内容となっている。
全労連は、労働法制に関する政策決定プロセスから、労使同数代表による協議という重要な手続きを外すことには断固反対であり、同報告書の撤回を強く求める。

 報告書は、見直しをおこなう背景として、(1)「労政審での議論が分科会・部会単位で行われていることもあり」、「分科会・部会を横断するような課題については議論されにくい環境にある」こと、(2)「近年、骨太の方針や日本再興戦略等の政府決定で基本的な方針が示されたことを踏まえて法改正の議論を始めることが多いことから……中長期的な課題についての議論が不足している」こと、(3)「働き方の多様化により増えてきている個人請負事業主など旧来の労使の枠にはまりにくい課題も生じてきている」ことの三点をあげているが、いずれも見直しの理由として認めることはできない。
 「(1)」については、本審に基本的な議論の場を設定すればいいのであって、事務局である政府(厚労省)の問題にほかならない。
 「(2)」については、労働政策の決定を経済(グローバル大企業の利益)にあわせてスピーディーに決定しようと、安倍政権自身が三者構成原則を捻じ曲げてきた結果、起きていることであり、本末転倒のこじつけといわざるを得ない。三者構成原則は、ILOをはじめ国際的な大原則として確立されてきたのであり、グローバル化が進展する今だからこそ、人たるに値する労働条件の最低規制を確保するために、現場を熟知する労使の代表が中長期的な課題について熟議を重ねる必要があるのである。
 「(3)」については、現在でも個人請負名目の脱法的な働かせ方が問題になっていることにくわえて、安倍政権も科学技術の発展等を口実に「時間や空間に縛られない自由な働き方」をいい出し、解雇規制をはじめ労働時間規制や最低賃金制、労災補償など労働者保護法制の適用を受けない労働者を増やそうとしているなかで、それを前にすすめる労働者代表を外した政策決定の場を設定する悪だくみとして批判されねばならない。しかも、三者構成の大原則を外すことへの批判をかわそうと本審のもとの「基本部会」という形式を打ちだしたのだろうが、「基本部会」の議論が三者構成の場でチェックされることはないのだから、姑息なやり方というほかない。

 全労連は同報告書に断固反対して、労働組合をはじめ諸団体と共同して三者構成原則の順守を求めるとともに、賃金の底上げや労働時間の上限規制、格差是正・均等待遇の実現など、人たるに値する労働者保護法制の順守・拡充を求めて、全力でとりくみを強化していく。

 2016年12月16日

全国労働組合総連合
事務局長 井上 久

 
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