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【談話】失業時の保障政策に対する国の責任放棄は許されない
−雇用保険法等一部「改正」法の成立について−

2017年3月31日
全国労働組合総連合
事務局次長  橋口紀塩

 本日、「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が参議院で可決・成立した。同法案は、雇用保険法、労働保険徴収法、育児介護休業法、職業安定法を一括したもので、扱う課題は、(1)雇用保険料率と国庫負担、失業時保障、雇用維持や職業能力開発にむけた政策の在り方、(2)育児・介護を行う労働者の仕事と家庭生活との両立支援、(3)職業紹介の機能強化・求人情報等の適正化など、多岐にわたる。政府は、これらをまとめて予算関連法案とすることで、法案審議を短期の日程におしこめて採決に持ち込んだ。このような国会軽視の手法は認めがたい。安倍政権に対し、あらためてその非民主的やり方に抗議する。

 今回の雇用保険法では、国の責任放棄ともいうべき改悪がなされた。基本手当の25%であるべき国庫負担率は、13.75%に引き下げられた際、「速やかに暫定措置を廃止する」としていた。それにもかかわらず、今回さらに、本来負担すべき額の10%、基本手当の2.5%にあたる負担へと削減を決めた。失業給付の基本手当は、2000年からの改悪の積み重ねによって最低賃金と逆転するに至ったが、手当日額の上限額の改善は最賃額に見合う300円程度にとどまった。これにより、45〜59歳の場合、2002年には10,790円あったものが、8,170円と25%も低い水準に据え置かれることとなる。
 また、雇用安定事業と能力開発事業の理念には、労働生産性のアップという考え方が、加えられた。国会では、リストラや長時間過重労働によって向上する「労働生産性」という指標を、雇用保険事業に据えることはふさわしくないとの批判が相次いだが、政府は押し切った。

 そもそも、積立金残高が多いのは、失業等給付が、支払われるべき人に適正な水準で支給されていないことに原因がある。手当額が低いのみならず、それを受給できている人は、完全失業者の22%にすぎない。また、パワハラなどで退職を余儀なくされるケースも多々あるのに、昨年度も75万人が自己都合を理由とした3か月の給付制限を受けている。制度が不十分であるため、失業者は生活困窮から逃れようと、あわてて求職活動を行い、質の悪い仕事でも就労せざるを得ない状況におかれている。人手不足感の強まりにともない、正社員雇用の増加傾向も認められるが、失業等給付の不十分さが、ブラック企業を助長している構図は消えていない。

 政府は、国庫負担をただちに本則どおり支払い、失業給付の給付額・給付日数を改善し、給付制限期間もなくすべきである。失業者のおかれる状況は大変厳しい。政府はそうした失業者の立場に立ち、不安を軽減するだけの生活保障と、必要な職業訓練、良質な雇用とのマッチングを行う制度を実現する方向での政策の見直しを行うべきである。
 全労連は今後も、失業時保障の拡充、それを通じた良質な雇用の増進を積極的に提言し、実現を求めるとりくみを強化していく。

以上

 
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