厚生労働省の最低賃金審議会目安小委員会は、7月25日午後10時、「労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるには至らなかった」として、全国加重平均を時給25円引き上げ、848円とする公益委員見解を示し、目安小委員会の報告として公表した。
全国加重平均848円は、昨年度実績の25円と同額で、2年連続の3%引き上げ目安となったが、諮問で示された安倍政権の意向に強く配慮した「3%引き上げ」を忠実に実行したもので、このまま推移しても全国加重平均1,000円への到達は2023年である。あまりにも遅々とした引き上げであり、経済的な波及効果も限定的である。さらにこの引き上げ幅では、IMF、OECD、ILO、国連などの多くの国際機関が相次いで懸念を表明している日本の最低賃金の低さが改善できる水準に到達したとはとても言えない。
さらに、Aランク26円、Bランク25円、Cランク24円、Dランク22円と、地域間格差がさらに拡大する目安報告となったことも容認できない。もし、目安どおりに改訂されたとすると、最高額は958 円、最低額は736円であり、実額による格差は現行の218円から222円へ、さらに4円も広がる。これでは、若者などの地方からの流出と大都市部への集中に拍車をかけることは明らかである。
全労連は、全国各地で「最低生計費試算調査」を実施し、その結果をもとに政府や審議会に対する要請を強めてきたが、調査結果からは全国どこでも22〜24万円(時給1,500円程度)が必要となっており、全国どこでも大きな格差は存在しない。全労連が繰り返し指摘しているように、ランク分けという現行制度が地域間格差を固定・拡大しているという制度的な欠陥があらためて明らかになった。
全労連はこの間、「社会的な賃金闘争」を強化し、とりわけ最低賃金については、全国一律最低賃金制度の実現を求めるとともに、「今すぐ最賃1,000円以上」の実現を求めてとりくみを強めてきた。全労連として、中小企業支援を強めながら、最低賃金を大幅に引きあげるように、行政や中小企業団体への要請や懇談をおこない、その社会的合意を大きく広げてきた。
全労連はあらためて、安倍政権と最低賃金審議会に対して、「今すぐ1,000円」の政治決断を強く求めるとともに、目安答申を受けて本格化する各県の地方最低賃金審議会の改定論議に対しては、目安答申を上回る積極的な改定、とりわけ、C・Dランク県の大幅な引き上げによる格差縮小を求めて、全国各地でとりくみを集中的に展開していく決意である。
また、今年度の目安報告からも現行制度の制度的な限界が鮮明になったもとで、生計費原則に基づいて、すべての働く人に人間らしい最低限の生活を保障する「全国一律最低賃金制度」を実現する「全労連最低賃金アクションプラン」の大運動を強化していく。
2017年7月26日
全国労働組合総連合
事務局次長 橋口 紀塩