人事院は本日、2017年度の国家公務員給与に関する勧告と報告をおこなった。
それによると、民間給与との比較で、月例給で0.15%(平均631円)、一時金で0.10月下回っているとして、4年連続となる俸給表の水準と一時金の引き上げが勧告された。初任給を1,000円引き上げ、若年層を同程度改善し、高齢層も含めてすべての俸給号俸を引き上げた。
4年連続となる引上げ勧告は、公務と民間労組が一体となってねばり強くたたかったことの一定の反映ということができる。しかし、同時に、アベノミクスの誤りのもとで貧困と格差が加速度的に拡大する中、人々の暮らしが悪化し、実質賃金が低下するもとで、生活を改善するためにも賃金の引き上げが強く求められていたこと、デフレ脱却など社会的要請からみても、勧告は不十分な引き上げといわざるを得ない。また、2014年勧告の「給与制度の総合的見直し」によって平均2%、高齢層では最大4%もの賃金削減がされ、経過措置として支給額が据え置かれているもとで、実際には多くの公務労働者が引き上げにならない。同時に、来年3月末で経過措置をなくすことにより多くの公務労働者が賃下げになる状況をうみだすことになる。労働条件の不利益変更である賃下げは断じて認められない。
また、昨年に引き続き、本府省調整手当を引き上げ、「給与制度見直しを円滑に進める」としたことは、地方との格差をさらにひろげるものであり、認めることはできない。最低賃金の地域間格差や公務員賃金の地域手当等による格差など賃金の地域間格差によって、若年労働者が地方から流出し、地域経済が衰退する要因ともなっている。賃金の格差是正こそが民間労働者や地域の事業者、自治体の切実な声である。同時に、公務員給与における職務給の原則をゆがめ、人事異動に弊害を引き起こすものとして批判されねばならない。人事院は、労働基本権制約の代償機関である。そうであるなら、公務労働者の切実な要求に正面から向きあい、職員からの信頼を取り戻す本来の役割発揮をめざすべきである。
全労連はあらためて、「給与制度の総合的見直し」の中止を強く求める。非常勤職員の処遇を早急に改善することや、長時間労働の解消も喫緊の課題である。また、定年延長、再任用・再雇用問題を検討するにあたっては、社会的な影響の大きさもふまえ、ひろく利害関係のある労働組合の意見を聞き、対応するよう求める。あらためて、憲法とILO勧告にもとづいて、公務労働者の労働基本権を早急に回復するよう強く要請する。
2017年8月8日
全国労働組合総連合 事務局長代行 橋口 紀塩