2017年12月19日
全国労働組合総連合
事務局長代行 橋口 紀塩
12月18日、厚生労働省は、生活保護費を2018年10月から段階的に引き下げると発表した。内訳は、生活扶助費が180億円の引き下げ(最大で5%の減額)、母子加算が20億円の引き下げ(平均2.1万円から1.7万円の減額)で、児童養育加算が40億円増とされているので、差し引き160億円の削減とされている。
言うまでもなく、生活保護制度は、憲法25条にもとづく国民の生存権を保障する基本的な制度であり、生活保護に対する攻撃は、現在の生活保護受給者のみならず、すべての国民の生存権に対する攻撃である。また、生活保護基準は、すべての国民が健康で文化的な最低限度を送る上でのナショナルミニマム=国民生活の最低限保障の基軸であり、それを引き下げれば国民生活にさまざまな影響を及ぼすことは必至である。
安倍内閣の今回の生活保護基準の引き下げは、2013年の史上最大と言われた生活扶助水準の切り下げ(平均6.5%、最大10.0%)、2015年の住宅扶助基準・冬季加算の削減に次ぐものである。2013年の切り下げに対して、全国で「憲法で保障された生存権を侵害し、生活保護受給者の尊厳をないがしろにするもので許せない」と、全国各地で「いのちのとりで裁判」が起こされ、争っている最中である。その判決が一つも出ていないのに、それを無視するような連続引き下げは絶対に許されない。
「いのちのとりで裁判」では、「食事さえ犠牲にしての生活」「現在の生活は『死なない程度』の状態」「『何もせずにずっと寝とけ』と言われているようだ」「生きがいをどんどん奪われているような気になる」「これ以上、削るところはない」「もはや努力の限界を超えている」といった当事者の声が上がっている。こうした生活保護受給者の声や生活の実態を厚生労働省はどう考えているのか。そうした声や生活実態を無視して、さらに生活保護基準を切り下げることは絶対に許されない。
もう一つの問題は、生活扶助基準額を、年収階層第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出額と比較して、その引き下げを提案していることである。日本の生活保護の捕捉率は20%程度だと言われている。年収階層第1・十分位の世帯は本来、生活保護が受給できるにもかかわらず、そこから漏れている階層だと考えられる。また、日本の貧困率は15.6%(2016年)であり、年収階層第1・十分位の世帯は貧困層だと考えられ、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を享受しているとは到底考えられない。
全労連は、今回の生活保護基準の連続引き下げに断固反対し、その撤回を求めるとともに、この間のすべての基準引き下げを、憲法で保障されたすべての国民に生存権=健康で文化的な最低限度の生活を保障するという視点から総点検・見直しを行うことを強く求めるものである。
(以上)