人事院は本日、2018年度の国家公務員給与に関する勧告と報告をおこなった。
それによると、民間給与との比較で、月例給で0.16%(平均655円)、一時金で0.05月下回っているとして、5年連続となる俸給表の水準と一時金の引き上げを勧告した。初任給を1,500円引き上げ、若年層を1,000円改善し、高齢層も含めて他のすべての俸給号俸を400円を基本に引き上げた。
5年連続となる引上げ勧告は、この間の春闘において公務と民間の労組が一体となってねばり強くたたかったことの一定の反映ということができる。しかし、同時に、貧困と格差の拡大、暮らしや生活の悪化、さらに実質賃金が連続して低下しているもとで、生活改善のためにも賃金の引き上げが強く求められていたこと、デフレ脱却など社会的要請からみても、勧告は不十分な引き上げといわざるを得ない。特に、2014年勧告の「給与制度の総合的見直し」によって平均2%、高齢層では最大4%もの賃金が削減され、今年4月で現給保障がなくなったことにより多くの公務労働者が賃下げとなった中で、わずかな引き上げではほとんど生活改善にはつながらない。
また、最低賃金の地域間格差や公務員賃金の地域手当等による格差など賃金の地域間格差が広がり、若年労働者が地方から流出している。そのことは地域経済が衰退する要因となっている。賃金の格差是正こそが民間労働者や地域の事業者、自治体の切実な声である。同時に、地域間格差の存在が公務員給与における職務給の原則をゆがめ、人事異動に弊害を引き起こすものとして批判されねばならない。人事院は、労働基本権制約の代償機関を自認している。そうであるなら、公務労働者の切実な要求に正面から向きあい、職員からの信頼を取り戻す本来の役割発揮をめざすべきである。
非常勤職員の待遇改善として、慶弔休暇を勧告したが、均等待遇の観点からみれば極めてわずかな改善と言わざるを得ない。定年年齢の引き上げは民間に先行した制度であり、社会的にも影響が大きい中で、政府への申出の内容は60歳を超えた賃金を7割の水準に引き下げるものであり、断じて認められない。
全労連はあらためて、「給与制度の総合的見直し」の中止を強く求める。非常勤職員の処遇を早急に大幅改善することや、長時間労働の解消も喫緊の課題である。また、定年延長、再任用・再雇用問題については、社会的な影響の大きさもふまえ、労働組合の意見を聞き、対応するよう求める。あらためて、憲法とILO勧告にもとづいて、公務労働者の労働基本権を早急に回復するよう強く要請する。
2018年8月10日
全国労働組合総連合
事務局長 野村 幸裕