10月24日、第197臨時国会が開会した。
この臨時国会に求められているのは、被災者本位の災害復興や政治の私物化を止め憲法や法律に基づく行政の確立、国家公務員の賃金引上げ、アメリカ第一主義の経済政策転換と国際協調に基づく平和の確立などの議論と予算・法律・政策の議論である。
しかし安倍首相の所信表明演説は、国民が国会に期待する内容とは大きくかけ離れ、国民に対して改憲と悪政の推進を押し付けるものとなっている。
そもそも安倍首相の今回の所信表明演説は憲法違反である。内閣総理大臣の発言にも関わらず、「改憲発議」演説は憲法99条による「憲法擁護義務」に反する。自衛隊観閲式(埼玉・朝霞駐屯地)での発言に続く、意図的発言は断じて容認できない。憲法の基本原則も知らない安倍首相は憲法について発言する資格はない。臨時国会を山場に設定し、「3000万署名」の早期達成にむけて取り組みを強化することが重要である。
外交・安全保障でも「新しい時代のアジア・太平洋地域の平和と繁栄の礎を築く」としながら、基調を日米同盟に求めていることは矛盾である。特定の国との同盟関係を基軸において地域の安全は確立しないばかりか、国際社会ではアメリカ政府の尖兵となることを表明したこととなる。自主・独立を基調とした国際関係の確立こそが必要である。そのためにも早急に不平等な日米地域協定見直しこそが喫緊の課題である。
さらに「全世代型社会保障改革」と称して、消費税10%増税を前提に幼児教育の無償化と「真に必要な」場合の高等教育の無償化を述べ、「生涯現役社会を目指し雇用制度改革に向けた検討を進める」としている。しかし、消費税は格差を拡大し、労働者にとっても「委託・請負」が職場に持ち込まれ労働条件の低下も招く。いまこそ、「増税反対」一点での共同の運動をつくりあげることが重要である。また、生涯現役かどうかは労働者の選択であって、高い国保料や保険料を払えない低賃金労働者を放置し、生活できない年金を押し付けながら生涯低賃金で働かせようという政策は到底認められない。
災害復興についても「インフラの総点検」を挙げている点は評価できるものの、その対策が「強靭」なインフラづくりでは、大企業・ゼネコン奉仕の巨大事業であることが見えて透ける。今、求められているのは被災者生活再建支援制度の拡充や制度の新設である。インフラに対しては「強靭」ではなく、地場産業を育成し地域での経済循環を支える老朽化の進むインフラの改修・改善である。
さらに演説では、「一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れる」と表明した。「人手不足」を理由にした外国人労働者の受け入れ拡大は拙速であり、撤回すべきである。いま必要なのは、外国人技能実習制度の見直しである。人手不足への対応は潜在的有資格者の就業促進や賃金・労働時間、労働環境など労働条件の改善や適正な下請け単価設定などが必要である。
全労連は拙速な「在留資格」の拡大に反対するため、実態を訴えると共に共同の運動を早急に開始する。
所信表明演説の基本的な誤りは「激動する世界をそのど真ん中でリードする」「強靭なインフラを創り上げる」「大型化を可能とする」という従来型の中央集権的で国際競争を基調とし「高め」「拡大」「超えた」という言葉で数字的な成果を強調していることにある。労働者・国民の生活実態を直視し、継続性のある総合的な生活重視の政策展開が求められる。
全労連は政治・財政の私物化を許さず、今国会での消費税増税中止、軍事費削減と国民生活優先の災害復興策や労働政策づくり、平和な社会で働ける日本と国際社会の実現、循環型経済による持続可能な地域社会発展にむけた議論とするため、国会内外での共同拡大にむけて、中央・地方で奮闘する決意をここに表明する。
2018年10月24日
全国労働組合総連合
事務局長 野 村 幸 裕