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【談話】入管法の拙速な見直しに反対し、労働条件向上と人権保護の総合政策を求める
〜入管難民法改正案の閣議決定について〜

 安倍内閣は、本日、外国人労働者受け入れ拡大のため、新たな在留資格を創設する入管難民法などの改正案を閣議決定した。法案は、人手不足解消のため、従来認めていなかった単純労働分野も含めた就労を可能とするものである。臨時国会で成立させ、法務省令で建設業や農業など14分野への受け入れを認め、来年4月1日に施行するとしている。しかし、業界の「労働力不足論」を丸呑みし、労働団体との協議も国民的な議論もないままに、この臨時国会で成立をはかることは拙速すぎる。
 全労連は法案の撤回と外国人労働者も含む総合的な政策確立を求めるものである。

 そもそも今回の制度導入の前に、優先すべきことは研修生や外国人労働者に対する人権侵害や差別を解消し、労働環境の整備を行うことである。外国人技能実習制度は7割の労基法違反や入管法違反が蔓延し、人権侵害が著しいと国内外から批判され、労働者保護の強化を目的に2017年11月に法律を改正した。しかし、効果の検証もない。また、外国人労働者は、在留資格の維持や更新を理由に使用者への従属度が高く劣悪な雇用・労働条件で就労をしている。日本語に堪能でないことも違法な就労を甘受する要因である。劣悪な労働条件は,国籍を問わず、すべての労働者とその家族にとって不幸をもたらす。リーマン・ショックと同じ轍を踏むことは海外からの日本社会への評価を下げ、外国からも労働者が来なくなるおそれがあり、避けなければならない。
 同時に、日本国内の労働市場や地域社会にも影響を及ぼしかねない。人手不足の産業分野の業界団体では、賃金・労働条件の改善を希薄化させ、外国人労働者の受入れによる低コストの労働力調達に期待感を膨らませている。国内に、当該業務の技術や資格をもつ労働者がその産業で就労できないのは、過酷な長時間労働・深夜交替制勤務、低賃金・低処遇が改善されていないことにある。潜在有資格者等の就業を促進する政策もないまま、受入れを拡大することは国内労働市場をさらに劣化させるものである。

 グローバル化する世界のなか、日本が住みやすく働きやすい社会であるとして外国人から選ばれる国となることは、望ましいことである。その前提は、まず国籍や在留資格の有無等にかかわらず、すべての人が憲法や国際法上の人権を享受し、保障される制度の確立である。国は労働市場を劣化させないために、受け入れ分野と職種、人数等について規制を強化しなければならない。資本に任せきりとする自由政策は、低賃金労働者の就労斡旋を行う人材ビジネスと業界によって、国内の雇用と労働条件に大きなダメージをもたらすものである。

 国内に受け入れる外国人は「人」であり、使い捨ての労働力ではない。
 全労連は日本で働いている外国人を含むすべての労働者の権利を守り、賃金・労働条件の改善をすすめるためにも、臨時国会における拙速な外国人労働者の受け入れ拡大政策に反対し、秩序ある受入れ、多文化共生社会の構築のため共同を拡げ、運動を強めていくことをここに表明する。

2018年11月2日

全国労働組合総連合
事務局長 野 村 幸 裕

 
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