2019年5月29日
全労連事務局長 野村幸裕
5月29日、参議院本会議において「女性の活躍推進法等の一部改正法」が成立した。最も注目されていたハラスメント規制にかかわっては、初めてパワーハラスメントを法的に定義したが、ハラスメントが人権侵害であると規定していない。禁止規定にはふみこまず、これまでのセクハラ・マタハラ対策において実効性のないことが証明されている「事業主の防止措置義務にとどめるものとなった。制裁措置もおかれないこととなり、今回の法改正では、ハラスメントに苦しむ労働者を救済する機能はきわめて弱いものである。2018年のILO調査では、80か国中60ヵ国がハラスメント禁止法を持ち、G7の中で禁止法制を持たないのは日本のみである。ILOが6月に開催する総会で「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶に関する」条約採択に向けて動いているなか、今回の不充分な法改正のまま審議を終了し、労働者・国民の切実な要求を顧みず採決を急いだことについて、全労連は強く抗議する。
国連女性差別撤廃条約40年をむかえる中、日本は、ジェンダーギャップ指数149か国中110位にとどまり、「女性の活躍」とは程遠い状況にあり、国連女性差別撤廃委員会から、セクハラを禁止する法整備をおこなうよう再三勧告されている。法案審議のさなかにも、就職活動中の学生に対するハラスメント事件が報道され、医療・介護労働者への深刻なハラスメントの実態が告発された。日本看護協会は患者・利用者からのハラスメント規制を要請するなど「すべてのハラスメントをなくせ」という世論は高まり、広がっていた。また、ハラスメントは労働者の健康といのちを奪う深刻な事態ともなっていることから、ハラスメントを包括的に禁止する法律の整備は待ったなしである。
法案の問題点は、衆議院厚生労働委員会での17項目、参議院厚生労働委員会では21項目におよぶ付帯決議で明らかにされている。付帯決議に示された問題点を先送りすることは許されない。女性活躍推進法において「男女間の賃金の差異」などの意義ある指標を状況把握項目に入れることや、ハラスメント禁止規定を法制化することなどは、今すぐ検討を開始すべきである。
全労連は、法制定に伴い開始される省令・指針の策定作業において、ハラスメント規制のための実効ある規定の整備を求めるとともに、職場におけるジェンダー平等実現、ハラスメント根絶に労働組合の交渉力を発揮してとりくむことを加盟組織に呼びかける。また、6月に採択が予定されるILO条約を批准しうる国内法の整備にむけ、運動を強めるものである。
以上